公式アカウント

短編小説「燃える島」12/黄健

やがて、通路の方から、李大勲中隊長を先頭に、それぞれ自動小銃と手榴弾を手にした中隊員たちの姿が現れた。貞姫は、一人ひとりの顔をじっと見た。中隊長以下全員6名、いずれの顔にもみないつもと少しも変わらぬ闘…

短編小説「燃える島」11/黄健

どうか当たってくれるようにと心に祈るのだが、相手の敵艦は、あたかも野獣の群れのようにうようよしている。マストごとにはためく色とりどりの旗は、世にまたとない醜悪で憎いものに見えた。 ついにわが方の砲弾が…

短編小説「燃える島」11/黄健

どうか当たってくれるようにと心に祈るのだが、相手の敵艦は、あたかも野獣の群れのようにうようよしている。マストごとにはためく色とりどりの旗は、世にまたとない醜悪で憎いものに見えた。 ついにわが方の砲弾が…

短編小説「燃える島」10/黄健

大勲も貞姫もいい知れぬ喜びに目を輝かせていた。 あたりは、しだいに明るくなってきた。敵弾はますます激しくまわりをゆすぶった。しかし二人は、まるで戦争は遠くのことのように、幼い時代のこと、軍隊でのこと、…

短編小説「燃える島」9/黄健

「私を許してください! どうかあなたがたと一緒に最後まで進めるように、正しい道からはずれないように、はげましてください」 貞姫は、自分の考えだけを追いながら、そらんじるように言った。 大勲は、黙って机…

短編小説「燃える島」9/黄健

「私を許してください! どうかあなたがたと一緒に最後まで進めるように、正しい道からはずれないように、はげましてください」 貞姫は、自分の考えだけを追いながら、そらんじるように言った。 大勲は、黙って机…

短編小説「燃える島」8/黄健

彼女は、自分のことよりもいっそう中隊長のことで胸がいっぱいだったのである。やがて大勲が思い出したように、 「きみは……」とゆっくり重い口をひらいた。 「いまからでも、帰ったほうがよくはないか……」 「…

短編小説「燃える島」7/黄健

まだ消えやらぬ白い星かげの下に黒くうねっている仁川の海は、まるで無気味なものに思われた。黒い海面に浮かぶ大小さまざまの艦艇は、海賊の牙城にも似て、ちらちら見えるそのマストや煙突や砲口や船体やらは、殺気…

短編小説「燃える島」6/黄健

「どうか体に気をつけてね」 「私のことは大丈夫、あなた方こそ、途中気をつけてね……」 「ええ、またきっと会いましょうね……」 「がんばって……」 「あなたもがんばって……」 後ろ髪をひかれる思いで去っ…

短編小説「燃える島」5/黄健

二人の仲間にもこの命令を伝えなければならなかったが、それに先立って貞姫は、自分自身わりきれない気持ちに悩まされた。最後のたたかいを前にして、砲中隊の人たちと別れるなどということはついぞ考えてもみなかっ…