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〈歴史×状況×言葉 14〉湯浅克衛(下)/「8.15」を糊塗する郷愁の欺瞞

日本の敗戦後、湯浅が最初に書いた短編「旗」(1946)では、朝鮮民衆が「独立万歳」に沸くなか、主人公は「(日本が)負けたことを一度は悲しんで、それからお祝ひとは行かないかな。さう行けば理想的なんだがな…

〈高句麗の豆知識 9〉倭との良好な外交関係

金銅釈迦如来坐像(奈良県明日香村飛鳥寺) 高句麗の勝利には外交上の成果を無視できない。 高句麗は隋の不穏な動きを見て、百済とその同盟国である倭との善隣に力を注いでいる。高句麗の嬰陽王は、文帝の恫喝を受…

〈歴史×状況×言葉 13〉湯浅克衛(上)/美化される朝鮮の記憶

前回まで中島敦のことを書いたが、中島と京城中学校で同級だった湯浅克衛(1910~1982)がいる。もはや今日ではほとんど知られていないが、生涯朝鮮を書き続けた数少ない日本の作家である。中島と同じく植民…

〈高句麗の豆知識 8〉輝かしい足跡

広開土王碑(レプリカ 朝鮮大学校) 朝鮮史上もっとも強大な国家、高句麗は栄光の時代である。 その偉大な足跡を大きく分けて見ると次のようになる。 ①建国から一大強国に成長した時代 朱蒙による建国に始まっ…

〈高句麗の豆知識 7〉薩水の大勝利

高句麗の鎧馬武士(朝鮮大学校 朝鮮歴史博物館) 乙支文徳の読みはずばり的中した。 いくら攻めてもビクともしない鳳凰城、そこに届いた文徳の漢詩(「神の如き策は天文を究め、妙なる戦術は地理に通じ、戦功はす…

〈歴史×状況×言葉 12〉中島敦(下)/自己を揺るがした朝鮮体験

中島敦の「巡査の居る風景―一九二三年の一つのスケッチ―」は、日本の支配権力の下で巡査として働く主人公趙教英の民族的葛藤を、同化と差別、親日と反日が入り混じる植民地下ソウルの複雑な現実とともに描いた。弱…

〈朝大・朝鮮歴史博物館 15〉朝鮮時代の展示物

訓民正音や測雨器、亀甲船 朝鮮(1392年~1910年)はおよそ500年間続いた王朝である。「威化島回軍」を機に実権を握った李成桂は、高麗最後の王である恭譲王を追放し王位に就いた。そして国号を朝鮮と改…

〈歴史×状況×言葉 11〉中島敦(中)/被支配者からのまなざし

中島敦に関し原稿の続きを構想していたさなかの12月5日、昭和天皇に有罪判決を下した唯一の民衆法廷である「女性国際戦犯法廷」から10周年の国際シンポジウムが東京外国語大学にて行われた。アジア各地からの旧…

〈朝大・朝鮮歴史博物館 14〉当代の最高傑作、高麗青磁

統一国家、高麗の展示物 高麗(918年~1392年)は朝鮮史上初の統一王朝である。開国当初は鉄原に都があったが、919年に開京(今の開城)に遷されている。現在の朝鮮を「コリア」と呼ぶのはこの高麗に由来…

〈歴史×状況×言葉 10〉中島敦(上)/「臆病な自尊心、尊大な羞恥心」

中島敦(1909~1942)と言えば、日本の教科書に広く採用されてきた「山月記」がおそらく最も人気の高い作品であろう。朝鮮学校でも高級部3年生の日本語教科書に収録されている。唐代、詩人としての出世を果…