劇団アランサムセ2017年度公演「날개~つばさ~」上演
2017年02月15日 14:34 文化“自分の足で、自分の物語刻む”
劇団アランサムセ2017年度公演「날개~つばさ~」が同劇団が送る南北共同声明45周年企画の第1弾として7日から10日まで、東京・日暮里ARTCAFE百舌で上演された。
原作は1917年に朝鮮・黄海道に生まれ、45年の解放直後に越南した詩人の故・李仁石が手がけた戯曲「날개」。72年7月4日に北南が分断史上初めて合意した7.4南北共同声明に触発され、翌年に発表された詩人の作品を、声明発表から45周年を迎える今年、アランサムセの団員たちが自ら脚色を加えリメイクした。
本公演では、金正浩座長をはじめ、金順香、金恵玲、鈴木良(沈揆成)がキャストを務めたほか、歌で45年前と今を繋ぐ存在として歌手のルンヒャンも共演した。また在日同胞演劇人による同作品の上演は、「プロとアマ、所属団体の政治的立場の垣根を越え、演劇を愛する在日同胞が集まり舞台を創ろう」という主旨のもとに、故・南相赫氏(元演劇部顧問)が立ち上げた集団「マダン企画」で84年に上演されて以来のものとなった。
金正浩座長は「今年で声明発表から45年。当時初級部6年だった私には、大人たちが統一を現実のものとして喜んでいる非常に強烈な印象があった」としながら、「主人公の女性は、現在の在日朝鮮人という設定。男性は70年代に生き戯曲をつくった作家。その二人が、作家の描く戯曲のなかで出合い、自身の抱える不安や絶望に、互いの存在を通して向き合い新しい一歩を歩もうとする内容だ」と作品について説明した。
さらに金座長は、「原発問題に揺れる福島や新基地建設反対闘争の沖縄、在日朝鮮人をはじめとするマイノリティへの切り捨てが露骨になるなか、混沌とした世界に対する不安は同胞も日本人も皆が抱いているはず。けれど実際には、不安はしまい込み闘おうと立ち上がる。現代に生きる在日朝鮮人の心のせめぎ合いや自問自答する等身大の女性の姿から何か一つでも感じ取ってほしかった」と話した。
知り合いに誘われたのをきっかけに5年前から毎年同劇団の公演を訪れているという古川鈴子さん(63)は「『自分の足で、自分の物語を刻んでいくんだ』という台詞がすごく重く突き刺さった。日本に生まれ日本人として育った私には絶対にわかることのできない感情をぶつける団員たちの姿に胸が苦しくなった」と感想を述べながら「最近では各地域で築いてきた理解も何もかも無視して、行政が勝手に朝鮮学校の子どもたちの学ぶ権利をすべて踏みにじっていく。私たち日本人も長いものに巻かれるのではなく、自分で判断することの大事さを改めて教えてくれた演劇だった。このような文化活動を通じて少しでも相互の垣根が低くなればと思うばかりだ」と涙ながらに感想を述べた。
(韓賢珠)