〈朝鮮紀行《食》 30〉朝鮮独特の食スタイル

サム＝包んで食べる

一般的に親が子に、あるいはラブラブな恋人同士が愛情を表現するのに、食べ物を「あ～ん」と直接口に入れてあげる光景がある。しかし、日本では恋人同士ならまだしも、初対面の相手にそのようなことをすれば、相手はドン引きするはずである。なのに、朝鮮ではこうした場面をしばしば見かけることがある。

ある日、野外で焼肉を食べることになった。運転手やガイドとは気の知れた間柄なので、サンチュに肉を乗せて包み、それをお互いの口に運んだりする。少々気恥ずかしいが誘われるままにいただいた。ところが、他のグループと席を一緒にすることになり、ある男性が肉やサムを私の口に運ぼうとしたので、私はとっさに拒否してしまった。怪訝な表情をする彼は、恐らく気分を害したと思う。