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〈みんなの健康Q&A〉B型肝炎(上)感染経路と症状

2016年05月13日 16:22 文化・歴史

長引く「風邪」には要注意

Q.  B型肝炎について教えて下さい。

A.  B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(以下HBVと略します)という、ウイルスの感染症です。A型、C型など他の肝炎ウイルスの名前をご存知の方も少なくないでしょう。先ずウイルスについて簡単に述べることにします。

1964年にオーストラリア先住民であるアボリジニの血液からタンパク質(オーストラリア抗原)がみつかり、1968年にはこのタンパク質が肝炎に関係することが判明しました。このタンパク質は、HBVの表面をおおうことから、ウイルスの表面抗原(HBs抗原)と名づけられました。HBs抗原は、今でもHBVの感染を診断するときの目印、感染の指標として血液検査に用いられています。

朝鮮半島や中国を含む東アジア、タイ、ベトナム等の東南アジア、そしてアフリカの一部地域にHBV陽性者が多いことはよく知られています。これらの地域では、ウイルスに感染している母親の血を介して出生時の児が感染する産道感染が多く、さらに、3~4歳までに家庭で両親や他の家族から感染することが多いのです。また、同じ頃に兄弟や友達と遊んでいるうちに皮膚の傷等から感染する可能性もあるでしょう。しかし、出生後間もない時期から3歳頃までにHBVに感染しても直ぐに肝炎は起きず、10歳代から30歳代の年齢で徐々に肝障害が発症します。この頃から始まる慢性肝炎は、出生から幼児期の間に生じたウイルス感染者の10~20%程度で見られるとされており、それほど多くは有りません。しかし、慢性肝炎は数年から30年以上続き、その間に肝硬変へ進むこともあります。そして、よく知られたことですが、慢性肝炎または肝硬変を背景に肝細胞癌が発症します。

Q. B型肝炎になるとどの様な症状が出るのでしょうか。

A. とても大事な質問です。慢性肝炎に症状はありません。

B、C型慢性肝炎はほとんど症状がない病気であり、このことは、肝硬変の初期や、肝細胞癌が合併した状態でも当てはまるでしょう。倦怠感、食欲低下、腹痛、腹部膨満感、下肢のむくみ、眼球や皮膚の黄疸、尿の色が濃くなるなど、一般に肝炎の症状として理解されている現象は、何れも、進行した肝硬変の状態で初めて現れる自覚症状と言えます。

B型肝炎では、自覚症状と肝炎の程度に関係はありません。

この点を理解して頂ければこの先はもう読まなくとも良いくらいです。

B型肝炎ウイルスの感染では、診断のきっかけは血液検査であり、診断の決め手も血液所見です。

実際にB型肝炎が診断されるきっかけは、健診での肝機能障害(血液検査でAST、 ALTが高いなど)、献血でHBVの感染を指摘された、肝臓以外の病気で受けた血液検査で偶然肝障害が分かった等が多いでしょう。

このような場合は症状がなくとも肝臓の専門医を尋ねることです。地元の専門医は肝臓学会のホームページから捜すことが出来ます。

「症状がないので気に留めず、あとで症状が出てから受診したら…」という事例を数多く診ています。

Q 大人がB型肝炎ウイルスに感染したらどうなるのでしょうか。

A 急性肝炎になることでしょう。

B型肝炎ウイルスに対する抗体(HBs抗体)がないヒトはウイルスに対して無防備なので、ウイルスにさらされると感染する可能性があります。出生から幼児までの感染では、肝炎は発症しないがウイルス陽性(非活動性ウイルスキャリア)の期間が長く続き、その後に慢性肝炎が発病するとお話ししました。しかし、大人になってからは、ウイルスが侵入して多くは2~12週の間に急性肝炎として発病し、ごく少量のHBVにさらされ半年後に初めて発症する場合も稀にはあります。

HBVは感染者の血液や、唾液を含む粘液、涙、汗、尿などにも浮いています。これらを介して非感染者の体内にウイルスが侵入すると急性感染が生じます。実際の感染経路は性的接触が最も多く、次は医療行為に伴う事故で、消毒不充分な医療器具による感染も未だ少数あるでしょう。

以前は、覚せい剤注射の時の注射器のまわし打ち、入れ墨、カミソリや歯ブラシの共用、ピアスの穴を明ける道具の共用などが挙げられましたが、現在はかなり稀と思われます。筆者は、アトピー性皮膚炎を持つウイルス感染者の皮膚に度々軟膏等を塗った経験があるB型急性肝炎の患者さんを診療した経験があります。B型ウイルス保因者の皮膚に炎症が生じ、その皮膚に付着した分泌物が、軟膏を塗ったヒトの指の小さな傷口にふれてウイルスが侵入、発病したものと考えました。

B型急性肝炎は一時的な症状を伴い発症しますが、ほとんどの患者さんはすぐに回復し、運悪く重症化する例は極めて稀(1~5%)です。初期の症状は発熱、上腹部痛、倦怠感、吐気、食欲不振、眼球の黄疸、尿の色が濃い、などです。多くの場合は、最寄りの診療所などを受診しても最初は風邪とみなされるようです。風邪薬を内服したが症状が改善しない、そこで血液検査をしたらAST、 ALTが上昇し、血中でHBs抗原がみつかって診断がついた、という事例が多いのです。

症状が続く「カゼ」には要注意です。

(姜貞憲/手稲渓仁会病院消化器病センター、札幌市手稲区前田1条12丁目1−40 、TEL 011・681・8111)

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