東北アジアの平和確立のために/朝鮮統一支持全国集会シンポジウム
2015年11月17日 14:06 朝鮮半島朝鮮統一支持運動第33回全国集会in埼玉の全体集会(7日)では、「朝鮮脅威論を糾す―東北アジアの平和確立のために」と題したシンポジウムが行われた。山口大学の纐纈厚教授・副学長と朝鮮大学校文学歴史学部の李柄輝准教授、朝鮮の自主的平和統一支持日本委員会の富山栄子代表委員がパネリストとして登壇した。各氏の発言(要旨)を紹介する。
朝鮮脅威論の虚妄性を暴く~「朝鮮分断」と戦後日本の責任問題~
■纐纈厚(山口大学教授・副学長)
植民地支配責任の希薄さ
朝鮮分断の最大の原因は、歴史的に見れば日本帝国主義にある。本来なら日本が分断の憂き目にあうこともやむを得なかったはずなのに、国際政治の中で「日本分断」が回避され、分断ラインが東海を越えて朝鮮半島に「移動」してしまった。日本が負うべき敗戦の責任を、36年間も植民地支配された朝鮮が背負わされた。しかし、この歴史過程への認識が戦後日本および日本人の中で希薄になっていった。敗戦後、朝鮮分断の悲劇と犠牲の上に米国による日本占領が行われる中で、植民地支配責任に対する認識は深まらなかったのだ。しかも近年では、加害責任の深化とは真逆の「被害者意識」が、拉致事件などによって増幅されている。
米国とソ連の分断責任も非常に大きい。戦後国際政治における主導権を確保しようと意図した米国に対し、ソ連も自国の安全保障を優先し、朝鮮分断を黙認した。しかしソ連は解体してしまったし、米国も分断責任について語ろうとしない。私はこの問題に関して米国の研究者と再三やりあったことがあるが、リベラルであると言われる研究者であっても一向に認めない。朝鮮分断における責任に対して、米国は非常に無頓着であるといえる。
安保法制を正当化
米国の経済は今、非常に悪くなっている。そのような中、米国は朝鮮半島におけるヘゲモニー(覇権)―米国主体のアジア国際秩序・アジア安全保障体制をキープするため、朝鮮に対して米韓合同軍事演習などの軍事的恫喝を行うとともに、朝鮮の核・ミサイル開発をめぐって「朝鮮脅威論」をけん伝しながら南北朝鮮統一に対するネガティブキャンペーンを張っている。さらに同盟国である日本と韓国、とりわけ日本との軍事一体化を徹底強化している。これを法的に担保したのが安保関連法だ。
日本では「朝鮮脅威論」を扇動することで安保法制が正当化され、強行採決された。90年代以降、日本政府は米国の対朝鮮侵攻作戦と連動する自衛隊の役割を規定した「K半島事態対処計画」を極秘に作成していたが、安保関連法の成立によって可能となった集団的自衛権行使において、その射程に朝鮮半島有事が据えられている点を注視すべきだと思う。今後は集団的自衛権の名において、自衛隊が朝鮮半島に攻め入ることもできる。このような状況から、南北朝鮮の自主的平和統一は緊急性を要しているといえる。
「戦前レジームへの回帰」
安倍首相のスローガンは「戦後レジームからの脱却」だった。このスローガンの看板の裏には「戦前レジームへの回帰」と書かれているのではないか。明治国家成立以来、日本は絶えず近隣アジア諸国に「仮想敵」を設定して脅威を扇動し、中国大陸や朝鮮半島への侵略戦争・植民地支配を正当化してきた。今の日本の保守政権も「朝鮮脅威論」を煽ることで排外ナショナリズムを喚起し、侵略戦争責任と植民地支配責任を払拭しようとしている。
日本人がなぜ歴史をしっかり見つめようとしないのか、それは簡単に言えば、ふり返りたくない過去がそこにあるからだ。しかし、侵略戦争責任と植民地支配責任論を徹底して議論の俎上に載せない限り、前に進むことはできないと思う。