南京事件の史実を伝える/映画「ジョン・ラーベ」、5年がかりで公開
2015年09月30日 18:00 歴史“最悪なのは無知ではなく、偽りを真理とすること”
各地で自主上映会
日本軍による南京事件(南京大虐殺)を題材にしたドイツ・フランス・中国の合作映画「ジョン・ラーベ~南京のシンドラー~」の自主上映会が各地で開かれ、話題を呼んでいる。2009年に世界中で公開された映画だが、当時日本ではその内容が問題視され、一般公開されなかった。日本の市民団体が上映権を得て、日本での公開を実現した。
「無知は恥ずかしい」
1937年12月、シーメンス支社を預かるビジネスマンとして南京に赴任していた主人公のジョン・ラーベ(John Rabe)は、日本軍の侵攻に直面する。迫り来る日本軍を前に、南京城内に安全地帯を作って無辜の市民らを守ろうと立ち上がった―。
映画はジョン・ラーベが書き残した日記から着想を得て、史実を基に製作された。監督はドイツ人のフローリアン・ガレンベルガー。彼はジョン・ラーベの孫でもある。
2時間14分の同映画には、香川照之、ARATA、柄本明、杉本哲太といったテレビで馴染みのある日本人俳優たちも出演している。中でも香川照之は、日本の皇族であり陸軍中将であった朝香宮鳩彦を演じた。
2009年に公開され、最優秀劇映画作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀美術賞、最優秀衣装賞といったドイツ国内の映画賞4冠を獲得した。中国でも「ラーベ日記」というタイトルで公開されて人気を博した。
しかし、日本では配給会社が見つからず、公開が実現できずにいた。そんな中、日本の市民団体「南京・史実を守る映画祭」実行委員会では約5年にわたる交渉の末、同作品の日本での上映権を買い取った。同会では昨年5月に東京で映画を初上映し、現在では各地に映画の貸し出しを行っている。北海道から沖縄まで、すでに20カ所以上で自主上映会が開かれた。
9月26日夜、東京・板橋区で行われた自主上映会には、多くの人々が訪れた。会場にスクリーンはなく、映画は白い壁に映し出されたが、観客は身を乗り出すようにして熱心に画面に見入っていた。
高校3年生の息子を連れて映画を観に来たという女性(46、板橋区在住)は、「当時、日本軍によって中国の兵士と市民が多く殺され、それが国際法を無視した行為であったということを、現代史の教育においてきちんと伝えなければならないと思う」と話していた。
女性は、「過去の侵略を『進出』と言い換えたりするのは本当に恥ずかしいこと。それに乗せられて無知なままでいることもまた恥ずかしいと思う。息子には、最低限の史実を知っている人間に育ってほしい」と述べた。