高嶋伸欣・琉球大学名誉教授の講演(要旨)/「日朝国交正常化を求める9.13集会」
2015年09月17日 10:38 朝鮮半島“日本の民主主義は歪められている”
拉致問題の発端、大局的に捉えるべき
安倍首相が拉致問題の解決に対する熱意を喪失しているのではないかという指摘があがっている。会員制情報誌「選択」(2015年5月号)によれば、今年春の段階で「官邸は拉致問題を放棄していた」という。
安倍首相は、拉致問題はこれ以上展望が開けず、この問題に時間とエネルギーを使っても自らの支持率向上につながる劇的な成果はあげられないと見切っているのではないか。しかしマスコミはこのようなことを報道しない。それを報道されたら困ると安倍政権がマスコミをコントロールしているのに加えて、もしそのようなことを新聞やテレビが伝えたら視聴者や拉致被害者の家族から「一億一丸となって北朝鮮がけしからんという世論をつくらなければ」「横田早紀江さんの悲しそうにしている顔を忘れたのか」などと攻撃されることが予想される今の社会状況が背景にある。このように、日本の民主主義は歪められてしまっている。
日朝ストックホルム合意発表の翌日、新聞各紙が日朝合意文書の全文を掲載していた。それには、「日本側は、北朝鮮側に対し、1945年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨および墓地、残留日本人、いわゆる日本人配偶者、拉致被害者および行方不明者を含む全ての日本人に関する調査を要請した」とある。見てのとおり、拉致問題がトップにきているわけではない。
しかし外務省関係者に対し、安倍首相が拉致問題に関する調査報告書でなければ朝鮮側から受け取ってはならないと指示したとの情報がある。安倍首相は拉致交渉を重要課題として掲げてきた。首相になれたのも拉致問題で強硬姿勢を示してきたからだ。そのため拉致問題以外の報告書を先に受け取ってしまっては立場が保てず、世論の批判を浴びてしまうという状況となっている。
安倍首相は昨年5月末の時点で、拉致問題における大きな進展があったことを世間にアピールして、自らの支持率を上げたかった。昨年7月に、国民の反発が強い集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定を強行しようとしていたからだ。