〈続・朝鮮史を駆け抜けた女性たち 26〉宮中に神堂を建てる/張玉貞
2011年03月11日 00:00 文化・歴史唯一、宮女出身の王妃
奴婢の娘
禧嬪張氏(1659~1701)、一般的には張禧嬪と呼ばれる。本名は張玉貞。中人階級の父と奴婢の母の間に生まれ、幼くして宮中に内人(宮女)として入内、朝鮮王朝実録にも記されるほどの美貌を持ち、第19代王の肅宗に寵愛される。
当時、「聖女」と謳われた正妻である王妃仁顯王后を「陥れ」、王妃の座を「手に入れ」た、朝鮮王朝4大「悪女」の一人。優しくしとやかな「糟糠の妻」を、あの手この手で追い出そうとする毒々しい妾。張玉貞はこのように語られることが多い。
だがよく考えてみると、奴婢の娘(朝鮮王朝時代、基本的に子は母の階級に属した)である彼女と、生粋の貴族である仁顯王后を、二極対立の善悪でだけ対比することは不自然なことである。男性に都合のいい「婦徳」を身上とする貴族の娘と、幼くして人生の辛酸を嘗めつくした奴婢の娘。この2人の生き方が同じであるはずがない。
時代背景や政治状況、その中での人間的苦悩、そういうものと合わせて考えることで、「悪女」張禧嬪は、本来の張玉貞としてわれわれの前に姿を現すのだ。