〈人物で見る朝鮮科学史 34〉高麗の科学文化(7)
2007年06月29日 00:00 歴史火薬製法に挑んだ崔茂宣
現在世界でもっとも有名な賞といえばノーベル賞であるが、ダイナマイトの発明でばく大な利益を得たノーベルの遺言によって制定されたことはあらためて述べるまでもない。ダイナマイトはニトログリセリンを原料とするが、それ以前の爆発物は中国の4大発明の一つとして知られる火薬である。火薬は10世紀頃の宋で発明されたが、高麗に伝わったのは14世紀のことである。
当時、高麗は倭寇の侵入に頭を悩ませており、海上で倭寇を撃退するためには火薬武器がもっとも効果的であると多くの人たちは考えていた。しかし、火薬の製法は中国でも最高の国家機密として秘密に伏されており、その製造は容易なことではない。そんな難事業に果敢に挑んだ人が崔茂宣である。彼は地位の低い両班の出身であるが、自宅に実験室を設け、私財を投じてそれに没頭したという。当時の火薬は黒色火薬で、その成分は焔硝(硝石)、硫黄、柳灰(木炭)などであるが、なかでも焔硝を得る方法が難しく、崔茂宣も苦労を重ねたが、なかなかうまくいかなかった。