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〈朝鮮と日本の詩人 11〉佐多稲子

2006年06月09日 00:00 文化・歴史

朝鮮の少女達よ

お前の白い上衣はこの夜更けに寒くはないか

今夜は月があまりに冴えて氷の中にいるようだ

停留場の石だたみの上にいると

しんしんと冷気が爪先を打ち敲く

お前たちはそこで互いに立ち寄り

空になったボール箱を腕に掛け

かじかんだ両手に息を吹きかける

けれ共、お前たちは元気だ

もう商店も戸を下して人影の少ない大通りに

お前たちは何か言っては犬の子のようにふざけ合う

お前たちの言葉は私には分からない

お前たちはきっと母国で生れたのだ

だがお前たちは母国をよく知らぬだろう

日本の都へ移されたことを知らぬだろう

朝鮮の少女達よ、お前は何故か知っているか

寒い夜風と白い埃に吹き晒され

明るい扉から扉へと男や女に追いたてられ

飴を売りあるかねばならぬということを

朝鮮の少女達よ

お前たちは今にその寒さを判然と知るだろう

お前がじっと立ちとまると

冷気がお前のからだをその白い上衣の上から締めつけてゆくようだ。

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