〈同胞美術案内 6〉宋英玉/鏡の中で凍り付く魂描く
2007年09月15日 00:00 文化無残に引き裂かれた人物を象徴
古今東西の絵画作品には「鏡」が多く登場する。鏡の前で髪を結い上げる女性を描いた作品をはじめ、自画像の制作では鏡が用いられるだけでなく、しばしばその鏡自体がキャンバスに描かれることもある。さまざまな効果をもたらす「鏡」であるが、今回の作品「三面鏡」ではそれがどのように使われ、どのように表現されているのだろうか。そしてこの作品の前でなにを感じ取るべきなのであろうか。
画面下4分の1ほどを空け、大きな三面鏡が掛けられている。装飾ひとつない簡素な鏡。薄手の台が手前にせり出し、その下にうっすらと影ができる。鏡は画面左右いっぱいに描かれている。そのことによって、この鏡がどこにあるのかといった疑問をこの作品が投げかけることはない。この鏡が掛けられた場所やその壁が重要なのではなく、ここに鏡があること自体に意味があるのだ。描かれた鏡。鑑賞者はこの鏡に注目し、そこに映し出された対象を注視することとなる。