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〈歴史×状況×言葉 9〉金子文子/「飽くまで自由の念に燃えよ」

2010年10月12日 00:00 歴史
金子ふみ子「何が私をこうさせたか 獄中手記」(05年に増補新装版として春秋社から出された)

金子ふみ子「何が私をこうさせたか 獄中手記」(05年に増補新装版として春秋社から出された)

昨年、児童虐待の相談件数が過去最高を更新したという。件数は大きく減少する様子もなく、最近も親により児童が死に至るような凄惨な事件が報じられた。根本的な解決に向けた対策や展望が容易にはつかめない、ゆがみきって殺伐とした日本社会の中で、だがその根本原因であるはずの「貧困」がこうまで問題化されないのはなぜか。経済的な貧困、そして精神の貧困。政治もメディアも深刻を装いながら「何が彼、彼女らをこうさせたか」について決して正面から問いかけ訴えようとしない。

「何が私をこうさせたか」-貧苦の中で両親に捨てられ、大人たちにいじめぬかれ、社会から虐げられついには国家権力により圧殺された23年の短い人生の果てに、だが類まれな気高い精神の自由を獲得した金子文子(1903~1926)の獄中手記である。

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