〈歴史×状況×言葉 4〉高浜虚子/憐れまれる存在ではない
2010年04月12日 00:00 歴史「韓国併合条約」の翌1911年、高浜虚子(俳人、小説家 1874~1959)は二度にわたり朝鮮に遊んだ見聞をもとに長編小説「朝鮮」(「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」の両紙に連載)を書いた。俳人として、また写生文の創始者と言われ小説も残した虚子だが、「朝鮮」では、さまざまな朝鮮人と日本人が登場し入り混じるなか、当時の植民地朝鮮の風俗が紀行文風に綴られていく。作品の評価はさまざまだが、ほとんど内面の感慨を交えることのない写生文の中にもおのずと朝鮮に対する蔑視観と優越意識が随所に現れている。主人公「余」には「全く矛盾した二個の考」、すなわち征服され衰亡した朝鮮に対する憐憫と、「流石に日本人は偉い」という誇りとが、絶えず交互につきまとう。