〈朝鮮民族の美 5〉白磁鉄画 虎文壺
2011年07月29日 10:20 歴史前回で竜を紹介したため、それに続けて虎を紹介しなければならない。
この虎の壷も名作として名高い作品であるが、いくつかの特徴をもっている。
まず第一に、白磁といっても胎土は純白でなく、灰色をおび、釉薬も乳白色というより、発色が劣り、黄色がかっている。
これは16世紀末の壬辰倭乱の惨禍を乗り越え、17世紀に入り生産力を回復する過程で、質はやや劣るとしても窯業にも生気が現れて来たためである。
第二に、この回復の過程で、器に描く鉄画の図柄も写実を離れて、朝鮮的な、大胆な簡略化が行われるようになったことである。速度のある太い線によって、味のある諧謔味さえ発散させている竜や虎、そして個性的な草花が生まれることになった。
この虎の顔を見ると、眼はカッと見開き、長く鋭い牙はあるとしても、下あごは省略されていて、一向に恐ろしくなく、四足の先の爪は省略されて丸くなり、縫いぐるみの足を思わせる。
このような大胆な「簡略化」は、他のいかなる民族も真似のできない強烈な個性となり、かつ、それがたまらない魅力となって、人々を引きつけることになるのだ。
(金哲央 元朝鮮大学校教授)