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佐野通夫・こども教育宝仙大学教授の講演

2014年06月06日 11:18 文化・歴史 民族教育

「朝鮮学校がなぜあるのか『無償化』排除の不当性」

民衆の視点で歴史をみつめる

5月31日、板橋区グリーンホール(東京都板橋区)での「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する板橋集会で、佐野通夫教授による講演会が行われた。講演会の内容は次の通り。

佐野道夫教授

佐野通夫教授

朝鮮学校弾圧の歴史

朝鮮高校に対する「無償化」排除を考える上で、朝鮮学校がなぜ日本にあるのかという歴史を振り返ることが求められる。今の日本で一番の問題は歴史認識である。安倍首相は拉致問題の解決を強調するが、その解決のために植民地清算、日朝のゆがみの正常化をすべきである。それをしないがために日本はいまだに植民地宗主国の視線で物事を見ている。その中でもその意識すらない安倍首相の発言には非常に気をつけなければならない。ここに集まる我々も民衆の視点、個人個人の視点で歴史を通して事実を眺めていかなければならない。

日本の植民地支配下で、朝鮮人の間では「子どもを普通学校に入れると男の子は卒業後内地に連れて行って兵隊にして鉄砲の弾除けにするのだ。女子は内地に連れて行ってカルボ(売春婦)に売るのだ」という言葉が囁かれた。この発言から民衆は日本の支配が何を意味しているかを鋭く見ていたということがわかる。

1911年の「朝鮮教育令」により、日本人の学校は6年制なのにもかかわらず、朝鮮人の学校は4年制となった。これは日本統治下の社会において、短い教育年限によって日本人より低い資格とし、日本人の下で日本語を話す、補助としての植民地人を養成しようという目的で行われた。その後1934年に「簡易学校」を開設し、2年間日本語と農業を教え込んだ。これも日本人の下働きにする為だった。

解放後、在日朝鮮人は「国語講習所」をつくり、自主的な朝鮮語の学習を開始した。しかし日本政府は朝鮮学校をつぶすことを目的とし、弾圧を続けた。

また、1965年の文部事務次官通達で、「朝鮮人としての民族性または国民性を涵養することを目的とする朝鮮人学校は、わが国の社会にとって、各種学校の地位を与える積極的意義を有するものとは認められないので、これを各種学校として認可すべきでない」と各都道府県に対して指導してきた。

高校無償化と民族教育権

日本政府は、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)第13条-2(b)(c)を留保していた。2009年に民主党政権による「高校無償化」で解除したが、朝鮮学校のみが高校無償化の対象から排除された。この権利をめぐり、今各地で朝鮮高校の学生が原告となり裁判が行われている。東京の裁判では法律と省令の矛盾をつき、朝鮮学校の歴史的正当性を訴えている。また大阪、神奈川等の自治体では、これまでその「法的拘束力」が問題とされ続けてきた「学習指導要領」と朝鮮学校の教育内容の対比が無理やりに行われている。これはGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が朝鮮学校を不意打ちにたずね、資料をあつめ、設備の足らなさ、教員の資質、教員の政治活動、教育の内容の低さなどに難くせをつけて朝鮮人学校を非難する声明を新聞に発表した1947年の状況と何も変わっていない。

昨年は町田市で朝鮮学校の生徒にのみ防犯ブザーを配らないという事件があった。この件は大手メディアもとりあげ、各地からの抗議により、防犯ブザーが支給されたが、もっと大きい補助金、就学支援金については大手メディアはまったく無視しているという状況だ。

植民地支配の過去をもつ私達にとって、現在の教育に関する問題は私達自身の問題であり、私達がその歴史を共に振り返って、行動することが求められている。

(まとめ=金宥羅)

 

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