〝民族差別認めて〟 李香代さんが控訴
2025年11月11日 09:33 社会
大阪地裁前に向かう李香代さんと弁護団、支援者たち。李さんの勤め先の企業をあげた支援も大きな力になった(10月24日、大阪地裁)
大阪府泉南市議に民族的出自を攻撃された李香代さんは大阪地裁判決の勝訴を受け、11月7日に控訴した。弁護団は控訴前の4日に声明を発表し、地裁判決は「犬笛型ヘイトの構造を認めたうえで、投稿の削除をも命じて、政治家のSNS利用のあり方に警鐘を鳴らした点で、画期的な意義を持つ」としながらも、一方で「司法が深刻な人種差別・民族差別に向き合えていない現状が示された」と断じた。
この裁判は、朝鮮半島に出自がある民族的マイノリティへの民族差別であり、女性差別をも含んだ複合差別の被害回復を目指したものだった。公人である議員がSNSを利用し差別と偏見を煽った責任は重い。だからこそ大阪地裁判決は名誉棄損、プライバシー侵害、肖像権侵害のいずれの権利侵害行為を認定し、「犬笛型ヘイト」の構造を認めたうえで、投稿の削除も命じた。しかし、敗訴した添田議員からは謝罪、反省の弁は述べられず、それどころか同議員は敗訴後もYouTube動画やX上で従来の主張をまきちらしている。添田議員のフォロワーは約8万人。司法の判断はヘイトの歯止めになっていない。
「勝訴したとしても、このままなら一生後悔する」―。李さんが控訴を決めるのに時間はかからなかった。「なぜ添田議員が私を攻撃したのか。判決にはその答えが出ていない。添田議員は私がアイデンティティを培った朝鮮学校や、同胞の生活を支えてきた組織に矛先を向け、この活動に関わる人がいる会社に公金が使われてはいけないと主張する。後ろ指を指されるようなことは何もしていないのに、なぜ―」。
弁護団は声明で、添田議員の投稿によって李さんがフォロワーの攻撃の的になったこと自体が大きな被害であったにも関わらず、これが損害賠償額に反映されていないとして、控訴審では添田議員の投稿が持つ差別的意図を明らかにしたうえでその違法性が認められるべきだと主張。深刻な損害に見合った損害賠償を求めた。また、公職にある政治家がその影響力を背景にして民族的マイノリティに対して行った権利侵害であることを「司法」がより明確に示す必要があるとして、差別のない社会実現のための法的基盤を強化することを目指すとしている。
(張慧純)
市議の“犬笛型ヘイト”に賠償命令/大阪地裁、李香代さんが勝訴
公人が“民族的出自を攻撃”/李香代さん裁判、10月24日に判決