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〈トンポの暮らしを支える/こちら同胞法律・生活センターです!62〉共に学び成長できる同胞社会に

2025年09月12日 11:00 寄稿

私たちが住む現在の日本社会、そして同胞社会は、障害者が生きやすい社会でしょうか。障害者に対する差別と偏見はどれほど克服されているでしょうか。私たち一人ひとりも、無意識のうちに差別に加担していることはないでしょうか。もし自分の子どもが通うウリハッキョのクラスに障害児がいるとしたら、快く受けとめられるでしょうか。障害児を受け入れるための準備も配慮もないのならば、それはむしろ差別やいじめ、虐待を招くことにならないでしょうか。今回は、障害者福祉に携わる自身の経験から、障害者をめぐる日本社会のいまと同胞社会について考えてみます。

偏見がもたらす「不安感」

2020年に全国手をつなぐ育成会連合会により行われた、障害者関連施設建設への反対運動に関するアンケート調査では、過去10年間に障害者関連施設に対して、地域住民から反対された件数の割合が25%にも及ぶという結果が示されました。反対する理由としては、「何をするかわからない」、「怖い」などの漠然とした不安感が基になっていることが多いようです。

日本では、障害のある子どもは、障害のない子どもたちと同じ場で教育を受けることができず、障害のない子が学校生活を通して障害のある子と出会う機会がほとんどないのが現状です。障害者とふれあう経験がなければ、障害者の考えや気持ちを想像し共感することができず、障害者の権利が侵害されても他人事のように感じるのかもしれません。

分離・排除でなく、ふれあう機会

筆者も14歳になる次男がダウン症を持って産まれる前までは、障害者とは縁遠く生きてきました。次男を育てながら学び、障害者福祉の仕事を始めて多くの障害者と接する中で、障害者をめぐる様々な問題に関心を寄せるようになりました。

障害者支援の仕事をしながら強く感じることは、日本では障害者が福祉サービス関係者や家族とだけの狭い世界に閉じ込められていて、広い社会的なつながりを築く機会が少ないことです。

06年に国連で障害者権利条約が採択され、日本は7年後の13年に同条約を批准しました。22年、この条約が日本国内でどのように履行されているか確認する国連の審査により、障害のある子もない子も、同じ教室で一緒に学ぶインクルーシブな教育体制を作るよう日本に求める勧告が出されました。そこでは障害のある子も通常の教育制度から排除することなく、合理的配慮を受けながら共に学べるようにすることが求められました。

学校生活の中で困っている人がいれば、自然に助け合う気持ちが育まれます。しかし障害のある子と接した経験がなく、大人になってから障害者と出会っても、どのように接すればいいのか戸惑ってしまいます。障害のある子にとっても、困った時に周囲に助けを求める力を養うことが肝心で、そのために障害のない子どもたちの中で過ごす経験は、学校を卒業した後の社会の中で生きていく上で不可欠なものです。

同胞の中にも障害者はいるし、その家族もいます。障害の程度によっては毎日、障害のない子と同じ教育内容で学習するのが難しい場合もあるでしょう。しかし、だからといって分離して排除するのではなく、繰り返しふれあう機会を持ち続ける、そのような努力の積み重ねが必要ではないでしょうか。

ウリハッキョでの実践

障害のある私の次男は、小学生の頃は特別支援学級、中学生からは特別支援学校にふだんは通いながら、土曜日はウリハッキョで学ぶダブルスクールを続けています。次男がダブルスクールを続けていくには、同胞のボランティアやソンセンニムたちのたゆまぬ努力と工夫がありました。同じ教室での授業、遠足、運動会、学芸会、キャンプなど様々な学校行事を次男と共有しながら育ってきたウリハッキョの同級生たちは、次男をクラスメイトの一員として自然に受け入れています。

同胞社会の素晴らしいところは、生まれた時から命尽きるまで、代を継いで同胞たちとのふれあいを持ち続けるところにあるのだと思います。障害があってもなくても、共に学び成長できる関係づくりをみんなで工夫していけたら、ウリハッキョと同胞社会はより良いものになることでしょう。

障害者の権利と自由を押し広げている世界の潮流から出遅れている日本の制度の中でも、同胞社会において、分離された制度の壁を乗り越える工夫がいろんな場でなされるのは意義深いことです。そして同胞たちの日常生活の中で、子どもたちが過ごす学校の中で、障害者とふれあう機会を増やし、障害者の生活や権利について、みんながより身近に考えられるようになればと願います。

同胞法律・生活センターには、公認心理士や社会福祉士などの社会福祉に精通した専門相談員も在籍しています。なにかご相談事がありましたら、当センターまでご連絡ください。

(康昌宗、障害者支援員、社会福祉士、精神保健福祉士、同胞法律・生活センター相談員)

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