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〈DS取材班〉学生、同胞に寄り添う詩とメロディー/結成28年、朝大軽音楽団の魅力【楽曲試聴可】

2025年09月11日 09:00 DS取材班

「過去に日本各地で高い人気を得ていた朝大軽音楽団。懐かしの名曲を、もう一度聞きたい。可能であれば、歌の音源を公開してくれると嬉しい。また、当時のメンバーに結成初期のエピソードなどを語ってもらいたい」ーこんな依頼が、朝鮮新報のLINE公式アカウントを通じて寄せられた。朝大軽音楽団の楽曲は、朝大のみならず日本各地のウリハッキョや同胞たちの間で、世代を超えて歌い続けられている。そんな同胞たちを魅了する軽音楽団の魅力はどこにあるのか。DS取材班は、軽音楽団OGであるRUNGHYANGさんや現役メンバーらに話を聞いた。記事の末尾では、軽音楽団と、その前身である「芸術団」の楽曲を一部お聴きいただけます。▶︎DS(DIGITAL SINBO)取材班の特設ページは、こちらからご覧いただけます

芸術団という「新しい波」

今から28年前。1997年4月、朝青朝大委員会定期大会で産声を上げたのが、朝大軽音楽団の前身である「芸術団」。当時の朝大委員会は、学生たちから幅広い支持を得るため、朝大文化の新しい流れを作ろうと芸術団を結成した。

当時の芸術団は、朝大委員会の集会時に歌を披露するのが主な活動で、朝鮮の普天堡電子楽団や旺載山芸術団の音楽をコピーしていた。

しかし既成曲のコピーばかりでは朝大生たちの興味を持続させることができなかった。

この流れを大きく変えたのが、3期団長を務めた朴東成さん(経営学部)。かれを中心とした3期メンバーたちは、芸術団の路線転換を志した。

その方向性は「朝大生みんなが大好きになるような団体」。コンセプトは「朝大生自身の言葉で等身大の歌を」。戦略は「CDの発売による日本各地への普及」。そして、朝大での日常や人間関係、恋愛や友情などを描いたオリジナルソングを作っていった。

芸術団が初めて行った対外公演の様子(2001年8月)

1999年11月には学科演(朝大生と留学同の合同主催で行う学科別研究討論会)の夜に行われた交流公演で、「손목시계(腕時計)」を披露。好きな人を思う気持ちを腕時計に託して歌った、後に軽音楽団を代表するバラード曲だ。「POPS(大衆音楽)で朝大生活を表現する」。それまでにない新しいジャンルで、なにげない日常生活を描いた歌詞は、朝大生たちの心に響いた。

「손목시계(腕時計)」の歌い出しと共に会場は、しんと静まり返った。1番を歌い終えた後の間奏中に、大喝采が巻き起こった。朝大に新しい波が起きた瞬間であった。

自分たちにしか歌えない歌を

その学科演の舞台でマイクを握ったのが、RUNG HYANG(李綾香)さんだ。朝大教育学部音楽科34期卒業生で、シンガーソングライターや大阪音楽大学特任教授として幅広く活躍している。

RUNG HYANGさん(本人提供)

今までになかった新しい音楽のジャンルを築いた芸術団は、学科演の後、当時の朝大生たちの話題の中心となっていった。しかしそんな芸術団活動に否定的な学生もいた。

「かれらは『芸術団のやっていることは、ウリ芸術じゃない』、『日本や海外の音楽を彷彿とさせる』という。しかし、当時のメンバーたちは、どんどん新曲を作って歌った。批判はむしろ私たちが奮起する起爆剤になった」(RUNG HYANGさん)。

そんな中で、公演時に大学内で販売したCDを学生たちが教育実習先や卒業後の配属先で普及。芸術団の楽曲は瞬く間に、日本各地の朝鮮学校や同胞たちに広がった。

RUNG HYANGさんは、「人々の生活には必ず音楽がある」とし、「朝大生たちに寄り添える曲の必要性を感じ、寄宿舎生活での何気ない日常やその中での喜怒哀楽を歌った曲を奏でていった。私たちの活動は応援してくれる学生たちのおかげで成り立っていた」と、当時を振り返った。

当時の楽曲が今でも同胞社会で歌われていることについてRUNG HYANGさんは、「本当に嬉しい。現役のメンバーたちも時代の変化に合わせて、今の同胞たちや朝大生が必要としている音楽をこれからも作っていってほしい。どんな時も失敗を恐れず、自分たちにしか歌えない曲を思いっきり歌っていってほしい」と語った。

結成30周年に向けて

芸術団は2006年に名称を軽音楽団に改め、2012年からは音楽で同胞社会の新しい未来を切り開いていくという団員の思いを込めて「새날(セナル)」というグループ名で活動している。

現在ボーカル、楽器(ギター、ベース、ピアノ、ドラム)、プロデューサー合わせて34人が在籍する朝大軽音楽団。初、中、高級部時代から軽音楽団の楽曲に親しみ、軽音楽団への憧れを抱き入団を決める学生が多い。

金素向さん(本人提供)

副団長を務める金素向さん(文学歴史学部4年、ボーカル)もその一人だ。「掃除の時間や休みの時間に軽音楽団の曲が流れていて、よくトンムたちと歌っていた。修学旅行やオープンキャンパスで朝大を訪れ軽音楽団の公演を生で見た時は、とても強い印象を受けた」と語った。

尹康燈さん(本人提供)

朝高からベースを始めた尹康燈さん(経営学部3年、ベース)も、オープンキャンパスで軽音楽団の演奏を見て、「自分もいつかあの舞台に」と思うようになったという。「東日本大震災時に当時のメンバーが同胞応援ソングを書き下ろした。たくさんの同胞たちがその歌によって救われただろう」と語った。

呂松載さん(本人提供)

34人の大所帯をまとめるのは、29期団長の呂松載さん(理工学部4年、ドラム)だ。朝鮮新報読者たちにおすすめの曲はとたずねると、悩みに悩んで選んでくれた曲は「우리 청춘동네 빛내여나가자」。「演奏していてとても楽しいし、観客が合いの手を入れてくれて、会場が一体なる感じが好きだ」という。

そして呂さんは29期団長としてこう語った。「軽音楽団の音楽は同胞たちを繋げてくれる。歴代の軽音楽団の先輩たちが築き上げてきたものを、最高の形で後輩たちに引き継ぎたい。卒業まで残り少ないが、部員たちと最後まで駆け抜けていきたい」

(尹佳蓮)

芸術団

▼손목시계(作詞=鄭裕実、作曲=河弘哲)

 

▼자유하늘(作詞=金裕美、作曲=河弘哲)

 

▼모두의 노래(作詞・作曲=高元気)

 

▼벗 (作詞=慎泰俊、作曲=李相大)

 

▼메아리 (作詞=李淑任、作曲=李相大)

 

 

軽音楽団

▼래일 – 서로의 하늘을 찾으로 가자(作詞・作曲=軽音楽団)

 

▼거울앞에서(作詞=朴秀京、作曲=宋錦衣)

 

▼Railway~明日への道~(作詞=朴成徳、作曲=河弘哲)

 

▼우리를 보시라(作詞・作曲=尹英蘭)

 

▼우리 청춘동네 빛내여가자

▼우리 함께라면(東日本大震災・被災地同胞支援ソング、作詞・作曲=軽音楽団)

▼Slow Step (朝鮮大学校創立50周年記念映画「星の流るるせせらぎの辺で」(《별 흐르는 시내가에서》)挿入歌、作詞=朴成徳、作曲=李綾香)

 

DS(DIGITAL SINBO)取材班

 

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