朝大外国語学部 2人が英検1級合格
2013年07月20日 10:58 民族教育「雲の上の存在」が「手に届く目標」に
朝鮮大学校外国語学部4年の崔秀栄さん(東京中高出身)と金孝俊さん(広島初中高出身)が、公益財団法人日本英語検定協会が実施する実用英語技能検定(英検)の1級に合格した。崔さんは今年の3月初旬(当時は3年)、金さんは今月中旬に合格の知らせを受けた。1974年に創設された同学部から2人、3人目の合格者が相次いで出るという快挙を成し遂げたことで、学部内では驚きと喜びの声があがっている。
英検1級の1次試験は筆記、2次試験は面接となっている。合格率は7~10%。10人に一人が受かるかどうかという超難関だ。一般社団法人英語教育協議会スタッフである同学部の日本人講師(37)はこの知らせを耳にしたとたん開口一番に、「外国で長い間暮らしていたのか?」と聞くほど、現役大学生の合格に驚きを隠せなかったという。
一番驚いているのは本人たちのようだ。つい最近合格の事実を知った金さんは、「今でも信じられない。もしかしたら採点ミスで本当は落ちているのかも」と不安の表情をにじませながらも笑顔で喜びを語る。高3のときに英検2級、大学2年時に準1級を取得。今年の1月に初めて1級にチャレンジしたがあと2点が届かなかった。「悔しくてしょうがなかった」。同じタイミングで受験し、先に受かったのは崔さんだった。学友に先を越された金さんは「誰も成し遂げていないことに挑んでみようと1級を目指していたのに、どうでもよくなってしまった」と当時の複雑な胸中を振り返る。しかし、友だちや先生たち、家族の応援と励まし、期待が金さんの心を突き動かした。
前回の受験ではまだまだ努力が足りなかったと反省した。毎日英検の勉強だけに費やした時間は平均6時間。教材の勉強はもちろん、雑誌「TIME」、英字新聞を毎日欠かさず読み、YouTubeなどを利用してリスニングの練習をした。
「合格はしたが、まだまだ足りない部分が多い。例えばスピーキングなどは自分より長けている級友がいるのも事実。今後は言語における4機能全般のレベルアップに向けて頑張りたい」。ゼミは国際政治を専攻している。今後は英語を生かした仕事で活躍したいと意気込みを語った。
崔さんは、高2で2級に合格し、高3で準1級にトライ。惜しくも不合格だったが、大学1年次に再チャレンジし見事合格。しかし、「(準1級に合格した)その時点で満足してしまい、1級を受けること自体考えていなかった」と崔さん。そのまま1年が過ぎたが、3年にあがり何か明確な目標を持とうと1級合格を目指した。
「英検のためだけの勉強」ではなく、総合的な英語力を高められるよう金さん同様崔さんも、雑誌「TIME」やCNNニュースなどを通じて語彙力、読解力、リスニング力に加え幅広い知識力も高めていった。
頭の中で思ったことをそのまま口から英語で発することができる崔さん、ほぼ「英語が母語化している」といえる。クラスメイト曰く、寝言も英語で話していたというほど、英語漬けの日々を送っているという。
崔さんがどうしても合格したかった理由はもう一つある。それは「朝大のイメージを変えること」だった。「『朝大はほかの大学よりレベルが落ちる』という先入観をもっている人がいるようだが、そう言って勉強もせず遊んでいる日本の大学生に負けたくなかった」。3週間あった冬休みは一度も遊びに行かずひたすら勉強に専念した。自分の努力次第でいくらでも勉強できる環境が朝大には整っているということを、各地の朝高生たちにも知ってもらいたかったという。
崔さんが1年生で準一級に合格した時は、学部の先輩たちに大きなプレッシャーを与えた。また、今回2人の1級合格者が輩出したことによって、従来まで「雲の上の存在」であった1級が「手の届く目標」に変わった。金さんと崔さんがそのパイオニア的存在であることを、今回の快挙が如実に物語っている。
同学部日本語学科3年の李京柱さんは英語学科の授業をすべて選択しており、現在1級合格に向け勉強を重ねている。「1級合格は本当に素晴らしい。いつ図書館に行っても必ず先輩たちが勉強している姿がある。これを刺激に自分も合格を目指して努力していきたい」と話した。
(尹梨奈)