〈朝鮮の国際情勢認識〉阻めない自主化への世界的潮流/多事多難な2024年を概括
2025年01月17日 10:30 対外・国際昨今の国際関係で新冷戦の構図が深まる中、朝鮮は対外政策において自主的な立場を堅持している。激動する国際情勢を朝鮮はどのように捉えているのか。朝鮮外務省が発信する談話や関係者の見解、国内メディアの報道などを通じて探る。
労働新聞1日付は、2024年の国際情勢を概括する記事を掲載した。記事は冒頭で、昨年の国際情勢は「力が弱ければ国家主権と尊厳、人民の安寧を守ることができず、平和も享受できないということを最も明確に実証した」とし、中東とウクライナの情勢について言及している。
中東では、米国の全面的な支援を受けるイスラエルが暴虐の限りを尽くしている。
同国はガザ地区への武力侵攻を開始した23年10月以来、約4万7千人のパレスチナ人を殺害。また、シーア派組織ヒズボラに対する「対テロ作戦」という口実のもと、レバノンで4千人以上の命を奪い、南部地域を占領した。昨年12月には、米国、イスラエル、トルコらが背後で操るテロリストらによって、シリアのアサド政権が崩壊する事態が起きた。これに乗じてイスラエルは、シリアの軍事施設を一斉に攻撃し、不法占領してきたゴラン高原への入植を拡大するなど、領土拡張を目指す大イスラエル主義を露わにしている。
この間、米国は中東和平に関する国際的な総意が盛り込まれた国連決議案に対して何度も拒否権を発動し、決議案を否決に追いやってきた。労働新聞は、米国が莫大な軍需物資を供給しながらイスラエルの戦争行為を煽っているのは、イスラエルを手先にしてエネルギー資源が豊かな中東での覇権を回復しようとしているからだと問題の本質を突いている。
同紙はウクライナ情勢と関連しても、米国と西側の責任を追及している。
米国とNATOは昨年、ウクライナに対して長距離ミサイルATACMSを提供してロシア領内への打撃を許可したほか、ウクライナ軍をけしかけロシア西部のクルスク州を侵略、占拠した。しかし、ウクライナでは混乱と疲弊に直面している人々の間で、「戦争」を口実に大統領の座に不正に居座るゼレンスキー政権(昨年5月に任期満了)への反発が高まっている。国内では戦力確保のために徴兵年齢の引き下げや強制動員が行われているが、兵役忌避などを理由に多くの人々が国外に脱出し、戦場から逃亡する兵士たちも続出している。
同紙は、ウクライナ戦争が「ロシアを破滅させ、アジアの強国を四方八方から制圧、抹殺してユーラシア政治構図を描き直そうとする米国と西側の戦略的野望の所産」だと指摘。そのうえで、「ウクライナ人は米国と西側の利己的目的のために、最後の一人までロシアとの戦いに駆り出されている」と述べている。
また、米国がイスラエルとウクライナへの軍事支援を続けて戦争状態を維持することで、国際的な安保環境が第3次世界大戦が起こりかねない極めて危険な境地に達していると憂慮。しかしながら、米日韓の対朝鮮軍事的圧力が増し、軍事的対立が激化している朝鮮半島では、朝鮮の自衛的な戦争抑止力の強化が平和を担保していると強調している。
米主導の秩序を排撃
同紙は次に、昨年の国際情勢は「帝国主義者がいくら狂奔しても、自主と正義へと向かう歴史的な流れには絶対に逆らうことができないということを実証した」としながら、多極化・自主化の潮流について触れている。
はじめに例示したのは、アフリカで起きている政治変動だ。かつてフランスの植民地であった西アフリカのマリ、ブルキナファソ、ニジェール、チャドなどの国々は、自国に駐屯する米軍とフランス軍を撤退させる措置を取った。昨今の政変は、米国と西側に対する依存は混乱と破滅、植民地隷属を生むのみだというアフリカ諸国の教訓に起因するものである。
歴史を振り返ると、米国・西側諸国の対アフリカ政策は、この地域の国々に主権侵害、内政干渉、クーデター、種族及び教派間の対立と衝突、テロの横行などをもたらしてきた。それだけでなく、アフリカ諸国では新植民地主義的な経済構造のもとで資源強奪、経済的搾取、貧富の拡大が進み、言語を始めとした固有文化の喪失も引き起こされている。こうした背景のもと、アフリカ各地では反米・反西側感情、支配主義勢力に対する排斥の動きが日増しに強まっている。
同紙はこれらの事実について触れながら、昨年はアジアと中南米などの国々も米国と西側の内政干渉や「カラー革命」の試みに屈することなく立ち向かったと言及した。また、多くの国々が国連安保理の改革問題を強く提起し、金融や貿易などにおける多国間の協力枠組みの成長、強化に寄与していることについて取り上げた。
さらに、イラン、エジプト、アラブ首長国連邦、エチオピアなど、各地域で経済力、影響力を持つ国々がBRICSに新たに加盟(※6日にはインドネシアも加盟)したことで、米国と西側の市場が縮小し、支配力も弱まったと指摘。こうした流れを踏まえ、「米国主導の国際秩序を排撃し、新しい秩序を樹立しようとする傾向が強くなった」と昨年の国際情勢の特徴を述べている。
同紙は、昨年にとりわけ米国と西側、追随勢力を恐怖に陥れたのは、朝鮮とロシア間の包括的戦略パートナーシップに関する条約が締結(6月19日)され、効力が発生(12月4日)したことだと強調。同条約はユーラシア大陸に対決と戦争を生み出す米国式安保システムを粉砕し、平和を保障する新たな安保システムの樹立に寄与すると、その意義を際立たせている。
同紙は最後に、「国際情勢は最悪の状況へとひた走っているが、自主の軌道に乗った歴史の力強い前進は絶対に阻めない」というのが24年の総括であると締め括った。
このような情勢認識を持つ朝鮮は、昨年12月末の朝鮮労働党中央委員会第8期第11回総会拡大会議で、25年により有利な対外的局面を開くための戦略・戦術的方針を提示。最強硬対米対応戦略をとる一方、親善的で友好的な国々との関係を積極的に発展させていくと明らかにした。
(朝鮮新報)