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思いは一つ“伝統を絶やさない”/再起図る朝高ボクシング部

2025年01月14日 09:27 スポーツ

恩師の教え胸に伝統再び/東京

東京中高ボクシング部の復部に尽力したOB、関係者たちが都新人戦の応援に駆けつけた

昨年11月に行われた東京都高校新人戦で、東京中高の徐廷宇さん(高1、バンタム級)が優勝し、復活の狼煙をあげた同校ボクシング部。過去には、選抜やインターハイといった公式戦で輝かしい成績を収め、世界王者も輩出した伝統あるクラブは、近年まで休部状態にあった。

生徒数の減少、ボクシングをはじめとする格闘技の放送が地上波からネット配信が主流になったことで競技に対する関心が低下するなど、さまざまな要因によって、同部は休部という憂き目を味わった。

そんななか、同部OBたちを中心とした愛好家たちが2021年に「イオボクシングクラブ」を立ち上げた。「おやじファイト」(スパーリング大会)への出場を目指した朝・日のボクサーたちが、ボクシング部の部室を拠点に、スパーリングを行い、サンドバッグを打ち込んだ。こうして活動が活発化していくとともに、同クラブ立ち上げ人の1人でもある権俊司さん(48)が東京中高ボクシング部OB会の会長代行(現在は会長)になった。権さんは「イオボクシングクラブの盛り上がりを朝高ボクシング部の復活へとつなげよう」と復部を決意したと語る。

権さんをはじめとする有志たちは、生徒たちに向けた体験会を何度も開き、子どもたちの興味と関心を集めながら、復活に向けた足場を固めていった。

「真剣勝負の舞台を楽しみながら、勝利にこだわる。そのためのハードな練習の日々は、今後の人生の糧となる。私たちが朝高生の頃に体験したものを同じように経験してもらいたい」(権さん)

同部OBたちにとって伝統ある部活の再建は、かれらの恩師で、同校をボクシング強豪校に育てた故・李成樹元監督に対する恩返しだという。「人生のカウンターパンチャーになれ」-。困難に強い気持ちで打ち勝てという恩師の教えを今度は自分たちが紡いでいくのだと口をそろえる。

関係者たちは、このような思いのもと復部に向けた活動を地道に繰り広げた。そして23年に部員を確保し、約2年ぶりに部活動を再開。昨年4月には新たに1人が加わった。

23年当時、中3ながら入部を決意した徐廷宇さんは、権さんにマンツーマンの指導を受けながらボクシングに触れてきた。幼い頃から続けてきた野球の実力は推薦が届くほど。それでもボクシングを続けるため、高級部に進学した理由は「1対1の勝負に惹かれたからだ」という。

昨年4月に入部した金悠成さん(高1)は「体験クラブでサンドバッグを打った時、『これだ』と直感的に魅力を感じた」という。ボクシングのさまざまな魅力を入口に入部を決意した2人だが、「伝統ある東京朝高ボクシングを同胞社会に残したい」という思いは一致している。

金悠成さんの父でOB会の副会長を務める金成周さん(48)は「自分の子どもを追いかけることが、おのずと部のためになる。息子が良い懸け橋になってくれた」と、復部を喜びながら、OB会が部員とその家族のために物心両面でサポートを行っていくことを誓った。

今年、創部50周年を迎える東京朝高ボクシング部。OB、関係者たちの指導、サポートもあり、選手たちは強豪大学での出稽古など充実した環境で汗を流しながら、インターハイへの出場を目指している。

数多くのサポートで「全国」へ/大阪

「全国」に向け鍛錬を積む高咲姫さん(右)

一方、大阪中高のボクシング部OB会では輝かしい伝統を絶やさないために、3年ぶりに迎えた部員である高咲姫さん(高2)を積極的にサポートしてきた。

そして今回、高さんは第53回大阪高等学校ボクシング新人大会(9月)を経て、今年3月に開催される第36回全国高等学校ボクシング選抜大会(兼JOCジュニアオリンピックカップボクシング大会)に出場することになった。

OB会は高さんの入部後、これまで以上に同校ボクシング部を支援する目的で「一撃会」を発足。「一撃会」ではOBらが学校のリングに集って共に汗を流す一方で、会の参加費や、ゴルフコンペなどで集めた財政を、ヘッドギアやグローブ、バンテージなどの備品にはじまり、合宿費や諸般交通費に充てるなど同部を献身的にサポートした。

高さんは現在、校舎移転に伴い、練習拠点を「Rボクシングクラブ」(会長=梁学哲)に移し、クラブに通う男子選手らと共に鍛錬を積んでいる。

サポートしてくれる人々への感謝の思いを語る高さんは「ボクシングを通じて相手を思いやる気持ちを大切にするようになり、人間としての成長を実感できている」と言う。そしてメンタル面や技術面などでの課題について細かに語りながらも、「運動会のクラブ行進の際には、面識のない同胞からも激励の言葉をもらい、使命感を感じた。『全国』出場の機会が多くない中、期待に応えることで同胞たちに力を与えたい」と意気込んだ。

同部を指導する尹成龍教員は、高さんが「『楽しそう』という気持ちで入部してきた当初からは見違えるほど成長している」とし、「まずは『全国』で成果を出せるように指導に熱を注ぎたい。そしてそれが今後の部員増員に繋がれば、その生徒たちを全力で育てあげたい」と意気込んでいる。

(全基一、高晟州)

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