金剛山歌劇団/来年1月、半世紀ぶりの沖縄公演開催へ
2024年12月23日 09:09 文化・歴史新たな道を切り拓く決意込め
金剛山歌劇団という名を刻み50年を迎えた今年、各地では金剛山歌劇団ツアー公演が盛況に行われている。「道~歩んできた50年、そして100年へと~」とのタイトルを掲げた今年度のツアー公演。来年1月30日には歌劇団のツアー公演としては初となる沖縄公演が開催される。
沖縄での公演は、総聯沖縄県本部結成大会に合わせて開催された72年9月6日にさかのぼる。「復帰」直後の沖縄。歌劇団の前身となる在日朝鮮中央芸術団(1955年結成)による初の那覇公演(昼夜2回)を観ようと、那覇市民会館前に約6千人が列を成した。当時の屋良朝苗・沖縄県知事、平良良松・那覇市長なども観覧した公演について、現地紙・琉球新報は「(公演は)公衆を魅了し国交のない近くて遠い国・朝鮮民主主義人民共和国を新たに認識させた」と報じ、琉球放送に至っては、公演を記録に残し、できる限り多くの県民たちに観せようと公演の録画許可を芸術団側へ申し出たことを、本紙72年9月11日付が報じている。そして本紙は「過去、同様に歴史の被害者となった朝鮮・沖縄の人々のみが知る自主・独立の喜びを深く刻む公演」だとして、その意義を強調した。
それから約2年後の74年8月29日、芸術団は金剛山歌劇団として新たなスタートを切り、78年10月に沖縄公演(2日間・全4回)が開催された。来年1月の公演は、それ以来となる同地での公演だ。今年9月、現地に住む在日同胞と沖縄の人々で発足された公演実行委員会は、この間、日本各地の同胞そして沖縄の人々に、勇気と元気を届ける公演にしようと準備を進めている。
共同代表の一人で、沖縄で弁護士として活動する白充さん(39、同胞側代表)は、「沖縄は今なお辛い状況に置かれているが、今までの在日同胞そして沖縄の人々が、汗と涙を歌と踊りで勇気や笑顔に変えたように、今回の沖縄公演を、今の状況に光を射し、みなに勇気・元気・希望を与えられるような公演にしたい」と意気込む。また「道」というタイトルにちなんで、公演をきっかけに「新しい道を自分たちの手で、自分たちの世代が切り拓いていきたい」と決意を語る白さんは、「民族的背景や私たちのアイデンティティーに改めて目を向けて、沖縄と共に未来を創るきっかけになれば」と力を込めた。
同じく共同代表の親川志奈子さん(43、沖縄側代表)は「私は琉球人として、琉球の言語や民族性、歴史、土地に対する思いを持っている人たちにこそ観てもらいたい」と声高に訴える。
「沖縄には朝鮮学校がなく、伝統的な在日朝鮮人のコミュニティーはないので、その歴史や金剛山歌劇団のように本当に素晴らしく文化芸能を継いでいる人たちがいることを沖縄の人たちは知らない。在日朝鮮人の方々が、どういう思いで文化芸能やアイデンティティーを継承してきたのか、対して私たちはどうなのか。そのことを考える場になればと思う」(親川さん)
公演は、来年1月30日18時から那覇市の那覇文化芸術劇場なはーと・大劇場で開催される。また翌日には公演実行委が主催し「琉球と朝鮮の友好の歴史を訪ねる」と題したスペシャルバスツアーも企画されており、読谷村「やちむんの里」や渡具知の浜、恨の碑といった琉球・沖縄と朝鮮半島との関係性を紐解く魅力たっぷりな旅程が組まれた。
一方、約半世紀ぶりの沖縄公演の成功に向けて、実行委では、クラウドファンディング(目標額100万円)も実施している。12月19日現在42万5千円が集まった。
白充さんは「沖縄の人たちに、金剛山歌劇団という素晴らしい文化芸術を届けたい。そして在日同胞と沖縄の人々が今後手をつなぎ合っていけるよう、公演当日に来られる方も来られない方も県外からたくさん応援していただきたい」と協力を呼びかけた。
祖国と同胞たちの愛が刻まれた金剛山歌劇団の50年の道のり―。来年、沖縄の地でその崇高な歴史の続きが、新たな未来を切り拓こうと励む在日同胞と沖縄の人々の手で刻まれようとしている。
(韓賢珠)