公式アカウント

【寄稿】全国弁護士フォーラム2024 IN広島に携わって/黄英世

2024年11月26日 09:15 寄稿 民族教育

明るい光が差し込む未来を

広島初中高で行われた第3回目の全国弁護士フォーラム

2024年11月9日、「朝鮮学校を支援する全国弁護士フォーラム2024 IN広島」が広島初中高で開催された。このフォーラムは、朝鮮学校無償化裁判を通じて築かれた法律家のネットワークを維持・発展させ、朝鮮学校支援につなげることを目的に、2022年から年に1度開催されている。今年はその第3回目として広島で行われた。

私は広島初中高の卒業生であり、同校出身の弁護士だ。昨年秋に東京から地元・広島に戻った際、実行委員の誘いを受け、この1年間、フォーラムの準備に携わり、当日は司会を務めた。

結論から言うと、フォーラムは大成功だった。用意した席が足りないほど多くの方々にご来場いただいた。今回、法律家に向けた過去2回と異なり、一般参加を広く受け入れ、朝鮮学校を多くの人に知ってもらうことを目的のひとつとしていたため、当日の盛況ぶりはとても喜ばしいものだった。

当日のプログラムを振り返ると、午前中は学校見学が行われ、午後からシンポジウムがスタートした。テーマは「なぜ朝鮮学校差別が生まれるのか?~差別の根っこから考える~」。シンポジウム冒頭では、生徒たちによるスピーチと歌の公演が披露された。その内容は、朝鮮学校無償化裁判を通じて、司法に見捨てられ、心ない言葉を浴びせられながらも、裁判の結果が闘争のそれではないとし、ウリハッキョを守るために闘い続けるという決意に満ちたもので、参加者の心を深く打った。私自身、冒頭の公演だけでフォーラムの意義が凝縮されていると感じ、後続のプログラムが不要に思えるほど感動した。

その後、鳥取大学准教授の呉永鎬さんと映画監督の森達也さんによる講演が行われた。

講演に臨む森達也さん

呉さんは「朝鮮学校の歴史と存在意義~植民地主義から考える~」というテーマで、差別の根底に植民地主義が根強く残る現状を指摘された。特に印象深かったのは「差別を考えるには、自身のポジショナリティー(歴史的権力的位置性)を知ることが重要だ」との言葉だった。森さんは「差別の根っこはどこにあるのか」というテーマで、人は群れるものであり、群れは同質化を求め異質なものを排除する傾向にあることについてお話をされた。差別の根本を深堀りする内容は、朝鮮学校の問題に限らず、あらゆる差別や昨今の世界情勢を理解するうえでも示唆に富んでいた。

最後に行われたパネルディスカッションでは、「差別は無知・無関心によって生じる」との指摘や「昨今はたとえ差別を知ったとしても中立のスタンスをとる傾向にある」などといった指摘があった。また、教育・メディア・世論が互いに影響し合い、差別を形成している現状について、多角的な視点から意見が交わされた。

振り返れば、私は朝鮮学校卒業後、同校との関わりをほとんど持たないまま過ごしてきた。2012年12月に下村博文文科相(当時)が朝鮮学校に高校無償化制度を適用しない方針を表明した当時、私はロースクール生で、その後の裁判過程では、長らく司法試験合格を目指す浪人生だった。その間、日々の受験生活に追われ、呉さんのいう「ポジショナリティー」を失っていたように思う。しかし、今回、フォーラムの実行委員として関わりを持ち、当日の盛況を目の当たりにする中で、自分の「ポジショナリティー」を再認識できたように感じている。

テーマである「なぜ朝鮮学校差別が生まれるのか?」という問いへの答えやその打開策を見つける道のりは、とても困難を伴うものだと思う。しかし、この場を通じて生まれた議論や連帯が、少しずつでも社会を変える力となると信じている。

今後も、より多くの方々が朝鮮学校に関心を寄せ、声を上げることで、子どもたちの未来に明るい光が差し込むことを願ってやまない。

(弁護士)

Facebook にシェア
LINEで送る