子どもの人権救済の仕組みづくりを/第3回都議会勉強会
2024年10月31日 15:50 権利朝鮮学校の差別是正を求め、東京都こども基本条例から朝鮮学校の子どもたちへの補助金支給について考える都議会勉強会実行委員会(以下、実行委員会)が主催する第3回都議会勉強会「東京都子ども基本条例から3年 こどもの人権救済の仕組みづくりを」が10月24日、東京都議会議会棟内の会議室で行われた。
ここに実行委員会メンバー、朝鮮学校関係者、朝鮮学校保護者、立憲民主党、共産党、公明党所属の都議会議員、朝鮮大学校政治経済学部2年の学生ら合わせて約80人が参加した。
今回の学習会は、東京都こども基本条例(2021年4月施行)から見る子どもの人権救済の仕組みづくり、同条例の課題などについて学んだ。
野村教授が講演
勉強会ではまず実行委員会メンバーの猪俣京子さんによる経過報告があった後、東京経済大学の野村武司教授(弁護士)が講演を行った。野村教授は「東京都こども基本条例ハンドブック」編集・検討委員会委員も務めている。
野村教授は同条例の課題について、大人が聞きたい意見を子どもたちに聞き、それを子ども施策に反映することにとどまらず、子どもたち自らがテーマを選択してその意見を子ども施策に提言、反映させる子ども参加の仕組みが欠けていることや、子どもの権利を救済する機関が条例上にないことなどを挙げた。また野村教授は、アイルランドなど他国では子どもたちが自律的に意見を述べ、その意見を自分たちのやり取りの中で形成していくという仕組みの組織として「子ども・若者評議会」があることに触れた。野村教授は「時間がかかるかもしれないが、東京都でもこのような子ども参加の仕組みを整える必要がある」と指摘した。
野村教授は子どもの相談・救済機関は子どもの権利が守られているかを独立した立場からモニターし、子どもに開かれた形で、かつ子どもの意見を十分聞いたうえで子どもの権利を守るとともに、子どもの権利を促進する役割を持つ機関だと指摘。「日本にはそのような機関はなく、むしろ条例によって自治体にこのような機関が置かれてきたというのが大きな特徴だ。日本が子どもの権利条約を批准している国として子どもの相談・救済機関を国に設けることは義務だ」と主張した。
野村教授は最後に、このような子どもの相談・救済機関の役割として、子どもからの相談に応じ、子どもにとって一番いい方法を考え、問題の改善、解決を図る個別救済や子どもの権利についての普及・啓発などを挙げながら、「東京都こども基本条例の中核にあたる子どもの視線に立った施策を率先して推進し、子どもに優しい東京を作るためにはこのような仕組みを整えていくのが急務だ」と強調した。
朝鮮学校にも補助金を
講演の後には3会派(立憲3人、共産2人、公明1人)から参加した都議会議員、東京中高の尹太吉校長、朝鮮学校児童・生徒の保護者である宋恵淑さん(人権協会)が順に発言した。
大松あきら議員(公明党)が今年10月に発足した「外国人学校について考える勉強会」に関して説明した。同会の座長である大松都議は、▼同会には全会派から議員が参加していること、▼同会は国内で増え続ける外国人学校とそこに通う子どもたちとどう交流していくのかを考える会であること、▼今後、都内の朝鮮学校を含む外国人学校を訪問し、学校関係者とさまざまな意見を交換していくことなどについて話した。
勉強会に参加した朝大政経学部2年生11人を代表して発言した姜進一さんは、「私たちが通う朝鮮学校は民族の文化や歴史、言葉を学び、民族のアイデンティティを育む豊かな場だ。その一方で、今も東京都の朝鮮学校に対する補助金不支給、日本政府による高校無償化からの朝鮮学校除外、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムなどの在日朝鮮人差別がある。朝鮮学校の後輩たちには自分たちの民族の言葉、歴史、文化、アイデンティティをこれからも育んでほしいと思う一方で、私たちが過去に経験したような差別によって脅かされている学校生活を送ってほしくないという願いもある」と述べた。姜さんは最後に、「朝鮮学校に対する補助金を凍結している東京都は、こども基本条例にのっとって朝鮮学校に対する補助金の早急な復活と朝鮮学校の生徒たちが安心して学校に通える環境作りをしなければならない」と主張した。
これまでの都議会勉強会に欠かさず参加してきた金明美さん(48)は、朝鮮学校で立派な在日朝鮮人に育ってほしいという思いで現在、息子を東京中高(高2)に通わせている。「都の補助金が出れば、壊れている食堂の冷房を修理して食堂の運営を再開できる」と金さん。「私たちも日本国民と同じように税金を払っている。なのに補助金が出ないのはおかしい。朝鮮学校にもきっちり補助金を出してほしい」と切に語った。
(金盛国)