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平壌宣言から22年、日本の課題は/市民団体主催のシンポで

2024年10月16日 12:19 交流

虚偽と強硬方針で合意を政治利用

平壌宣言22周年、ストックホルム合意10周年記念シンポジウム(12日、連合会館)では、本紙の金志永編集局長、ジャーナリストの高野孟さん(「インサイダー」編集長・「ザ・ジャーナル」主幹)がシンポジストとして登壇した。両氏の発言の要旨を紹介する。(まとめ・李永徳、安鈴姫)

発言するシンポジストたち

日本は国益に資する戦略的選択を/金志永編集局長

金編集局長は、「朝・日合意が履行されなかった本当の理由〜歴代政権で繰り返された虚偽と詭弁」というテーマで発言した。

金局長はまず朝・日平壌宣言の原文を紹介しながら、日本の歴代政権は政府方針に沿って「日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決…」することに固執してきたが、平壌宣言の精神は日本の過去清算に基づく朝・日国交正常化にあると指摘。合意の内容とその後の日本の政策に矛盾があることに触れ、合意不履行の理由は日本が約束に反する言動を繰り返してきたからだと語った。

金局長はまた、日本には朝・日関係打開のために拉致問題の再調査が必要だという声があるが、朝・日間の「不正常な関係」を望む勢力が存在し、その勢力が世論の動向を握っている限り再調査をしても問題は解決されないとし、日本政府が拉致問題を政治的に利用してきたことについて解説した。

金局長はつづいてストックホルム合意に触れ、日本側が同合意において平壌宣言の履行を改めて約束していることを指摘。しかしながら日本は、朝鮮側が合意を遵守して実施した「すべての日本人に対する調査」の報告書を受け取らず、過去清算の問題も先送りにしていると非難し、このような過程は、拉致問題について朝鮮側が従来の立場を撤回することを期待して調査を進めても、交渉は必ず行き詰まるという教訓を残していると語った。

金局長は最後に、新冷戦の構図の中で、朝鮮は対米抑止力を背景に積極的な自主外交を展開している一方、日本は朝鮮の主敵である米国、韓国との軍事結託を深めていると言及。世界が転換期にある中、米国に追従し戦争危機を高めることは、地域の平和と安定のために日本が取るべき唯一の選択なのかと問題提起を行った。そのうえで、日本は拉致問題に捉われた狭い視野でのアプローチではなく、より広い観点から自国の全般的利益に資する戦略的な選択を下す必要があると語った。

対朝鮮バッシング、印象操作の材料に/高野孟さん

高野孟さんは「嘘で塗り固められた『拉致の安倍』」と題して、拉致問題が朝鮮バッシングの材料として政治的に利用されてきたことについて指摘した。

高野氏は、平壌宣言に基づき、2002年10月に5人の拉致被害者の一時帰国が実現した後、安倍晋三官房副長官(当時)らが5人を戻さないことを決定したことをきっかけに、反朝鮮、右翼勢力がこれを「断固たる強硬態度」と英雄視し、「拉致の安倍」という評価ができあがったと言及した。

また、横田めぐみさんの「遺骨」をめぐり、科学警察研究所と東京歯科大学が鑑定不能、鑑定困難との結論を出した一方で、帝京大学の吉井富夫講師らは「めぐみさんのものとは異なる2種類のDNAを検出した」と発表し、「偽遺骨」と断定した日本政府とマスコミによる憎悪キャンペーンが展開されたことに言及した。

高野さんは、「平壌宣言に則って、日本側の要請に協力してきた朝鮮が偽の遺骨を渡す動機や合理的な理由がない」と見解を述べ、「当時の細田博之官房長官と安倍幹事長代理が無理やり朝鮮への憎悪を煽った」と言及。遺骨の鑑定を、朝鮮を非難する材料に仕立て上げる印象操作が働き、今に至るもデータは秘匿されていると述べた。

また、「安倍は朝鮮が嘘をついていると公言しながら、家族らの思いを政治的に利用した結果、拉致被害者家族らによる『運動』の枠組みが非常に不幸なところへはまりこんでしまった。拉致被害者家族連絡会の中で遺骨鑑定に疑問を持った人たちも、当時の『安倍政治』には口を出せなかった」と、対朝鮮強硬方針がまかり通った当時の政治状況を指摘した。

高野さんは、「日朝関係の現状の打開に向けて、平壌宣言の原点に立ち戻り国交正常化の実現のために取り組まなければならない」とし、「現在のままだと日本は米韓と共に戦争する道しかない。戦略的レベルで何が望ましいのか、日本が安定と平和をめざす北東アジアの一員としての外交戦略を持てるかどうかが重要な点となる」と強調した。

(朝鮮新報)

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