〈ものがたりの中の女性たち82〉妓生三様―玉膚香、紫雲兒、妓生某の場合
2024年08月26日 09:00 寄稿あらすじ
玉膚香(オクプヒャン)
ある少年が山寺で学問に励んでいると、科挙の準備で山寺を訪れていた若き日の権景(クォンギョン)裕(ユ)(後の燕山君代の文臣)、柳(リュウ)順丁(スンジョン)(後の中宗代の文臣)と親しくなる。美しい顔立ちの少年にふたりが姉か妹はいるかと尋ねると、故郷でも有名な美しく聡明な妹・膚香がおり官妓だという。去年、その美しさと才能を買われて、都の教房に引き抜かれたと。そこで、ふたりは先に科挙に合格した方に妹を紹介してくれと頼む。少年が承諾すると故郷・羅州の家がある村の名と、その風景について詳細に聞きだす。2、3年後二人は科挙に合格、翰林になった権景裕は宴の席で歌う妓生たちの中に、膚香を発見する。自分を知らないかと問う権翰林に、膚香は知らないと答える。すると彼は膚香の兄と交わした約束を、まだ自分が無冠の時に羅州で彼女と交わしたと嘘をつく。膚香は機転を利かせ、涙を流しながら彼の嘘に合わせる。その夜、「約束」は果たされる。
紫雲兒(チャウナ)
美しく、才能あふれる紫雲兒は、愚鈍な孫比(ソンビ)長(ジャン)(成宗代の文臣)に仕えることが不満。ある日、士人某が自分の下手な詩を紫雲兒に評価してほしいと頼むと…
妓生某
科挙前の貧しい儒生だった朴(パク)信(シン)圭(ギュ)が、全羅道の観察使が催す宴会の末席にいると、ある妓生が帳簿を差し出す。他の妓生たちは将軍や各地の長官など金と権力がありそうな者たちに帳簿を差し出し、彼らも競って米と金をやろうと妓生たちの所に殺到し署名する。私のような貧乏学生には君にやる金などなく、食事にでもありつこうとしているだけだと笑うと、彼女は出世払いで構いません、私は人を見る目があるんですと笑う。
第八十二話 妓生三様
主に男性を読者としていた野談集には、王族の女性や著名な女流詩人、「烈女」として表彰された女性や犯罪がらみで世を騒がせた女性たちの逸話と共に、名妓と言われた有名な妓生や名もない妓生の逸話も数多く収録されている。1833年から69年の間に編纂されたと思われる野談集「紀聞叢話」では、妓生だった多くの女性たちの生活や考え方を垣間見ることができる。
嘘に応える