東西海連結大運河構想の研究動向など/『季刊 朝鮮経済資料』2024年第2号
2024年07月29日 10:37 経済『季刊 朝鮮経済資料』(発行=KAN経済研究所)2024年第2号が発行された。今号では、朝鮮の東海と西海をつなぐ大運河の建設構想を具体化するための最近の学術研究や、朝鮮が国内で新型コロナ感染拡大を克服した2022年8月以降のインバウンド状況などのトピックスが扱われている。
2022年9月7~8日にかけて行われた最高人民会議第14期第7回会議で、金正恩総書記は朝鮮東海と朝鮮西海をつなぐ大運河構想に言及した。この構想は1952年に金日成主席が提唱し、その後も折にふれて言及され、近年になって改めてクローズアップされている。研究動向レビュー「東西連結大運河構想を具体化するための最近の学術研究」(柳学洙)は、最近、「東西海連結運河の合理的な方案制定方法」(『気象と水文』2024年1号)と題した論文の研究内容を紹介し、大運河構想がどれほど具体的なプロジェクトとして検討されているのかを考察した。朝鮮国内の運輸は主に陸上輸送であるなかで、東西連結運河は河川が多い朝鮮の水上運輸を発展させるうえで研究すべき課題であると指摘している。
動向レポート「アフターコロナ移行後のインバウンドの現況」(朴在勲)は、朝鮮における新型コロナウイルスに対する迅速かつ強力な水際対策と、アフターコロナのインバウンド状況について解説している。とりわけ、防疫戦の勝利を宣布しアフターコロナへと移行した朝鮮において「国内におけるさまざまな制約措置は緩和・解除へと進んでいったが、対外的な防疫措置=水際対策の緩和にはさらに時間がかかった」とし、人的往来については未だ全面的開放には至っていないものの、2023年以降、自国民の帰国や、外国の要人、観光客を受け入れるための動きが始まったことに詳細に触れた。
民主朝鮮の法規解説「住宅管理法について」(解説:文浩一、訳:金幸寛・李星来)は、最高人民会議常任委員会第14期第28回総会(2023年10月19日)で制定された「住宅管理法」に関する内閣機関紙・民主朝鮮の解説記事(全4回)の全訳だ。解説者は、既存の住宅法と新たに制定された住宅管理法との関係について、「内容はかなりの部分で重複する」と指摘。ただし、住宅法の第2章で規定されている「住宅の建設」については住宅管理法の解説の限りでは触れられていないため、住宅の「建設」については、新たに「住宅建設法」なるものが制定されるのか、あるいは既存の 「建設法」に住宅を具体的に規定するのかなど、何かしらの法改正が進むものと推測した。また、本法には出生率を引き上げるための人口政策が反映されているとし、「三つ子を持つ世帯や多子女世帯には住宅を優先的に割り当てる」「結婚前の独身者には住宅を割り当ててはならない」という従来の住宅法にはなかった文言について、前者は子育てをしやすい環境を提供するためのものであり、後者は有配偶率の上昇にともなう出生率の向上を期待した政策だと指摘した。
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(鈴)