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〈学美の世界64〉誰もが持つ「自分の世界」/金龍主

2024年06月01日 08:00 寄稿

子どもの頃には誰もが持っていたであろう、「自分の世界」。私にも中級部の頃まではその世界があった。通学電車の窓の外では小さな人間が電車と並走しながらこちらにコミュニケーションを図ってきたし、ボールペンで顔を描かれ、シャーペンの芯で角や手足を作られた消しゴムは意志を持っていた。ノートの隅では棒人間たちが戦っていたし、どこからともなく天の声が聞こえることもあった。だが、それも大人になるにつれていつの間にか消えてしまっていた。何となく思い出すことはできても、その時確かにあった本物の世界はもうどこにもい。学生の作品にも、度々そういった「自分の世界」をそのまま描いた作品が現れる。

作品①「はじまりのにんじん歴史博物館」 。第49回学美金賞、九州初中高高3 裵時瑛

作品①の作者は、美術部に入ってからずっと、にんじんをモチーフに制作を続けてきたという。この作者の作り出すにんじんには顔と手足があり、まるで人間のように思考する。この作品は、そんなにんじんたちの歴史が記された博物館だ。

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