〈まるわかり! 法律で知る朝鮮10〉市・郡発展法にみる朝鮮の決断/李泰一
2024年05月24日 08:36 寄稿地方発展政策を法的に担保
■はじめに
周知の通り、今年に入り朝鮮は「10年創造大戦」に突入した。その名も「地方発展20×10政策」、非常にユニークな名称である。
朝鮮には計200の市・郡が存在する。本政策は、1年間に20カ所ずつ、10年間かけて200カ所すべての市・郡において全面的振興を成し遂げようとする大々的な国家プロジェクトである。決して余裕があるとは言えない困難な時期に、農村振興政策だけでも世紀的な偉業であるにもかかわらず、地方産業革命にも同時に乗り出した朝鮮労働党と政府の姿勢は、まさに人民大衆第一主義が単なるスローガンではなく具体的な政治理念であり実践的な政策であることの証である。自国の人民と交わした約束は何があっても必ず守るという党と政府の決意表明であるといっても過言ではない。
実際、本プロジェクトを知った国内の人々は、これに圧倒的支持を示している。何よりも江原道金化郡においてモデルケースを作った実績に基づいての政策提示であったことも相まって、大きな期待感、相当の説得力をもって、本プロジェクトの実行を注視している。
ここで注目すべき点は、これら新時代地方産業革命構想が一過性のものではなく、金正恩総書記によって着々と準備された一大プロジェクトであるということだ。それは個別的な行政機関や幹部の恣意的判断の余地を徹底的に排除し、人民たちの念願を人民の要求に応じて叶えるためのコミットメントデバイスによって担保されたプロジェクトとなっている。コミットメントデバイスとは、個人、組織、政府を特定の行動指針に拘束し、計画を確実に実行できるように、将来の行動に制約をかけるように設計されたメカニズムのことであるが、「朝鮮民主主義人民共和国市・郡発展法」(以下、市・郡発展法)はまさにそのメカニズムの一つである。
本稿では、市・郡発展法が制定された背景及び本法の特徴について簡単に解説する。