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〈朝鮮民族の美 50〉鄭●(善に攵)「万瀑洞」

2013年04月27日 10:36 文化・歴史

鄭●(善に攵)(1676~1759)は、朝鮮朝画壇ではじめて中国式の山水画の束縛から抜け出して、愛する自国の山水図を独特の手法で、写実的に描きはじめた人である。

絹本水墨淡彩、33X22cm、ソウル大学校博物館

「真景山水画」といわれる彼の作品群は、自分の住んだソウル近郊の山水から、南は慶尚道から南海岸、湖南地方(全羅道)の山水に及び、さらに金剛山はしばしば訪れ、平壌や咸興にも旅して画を残している。

彼は金剛山を最も愛し、これを主題として多くの画を残した。「金剛全図」をはじめとして内金剛、外金剛、海金剛などなど。

まず、万瀑洞の山水画を紹介しよう。見られるように、この画は遠景に鋭く切り立つ金剛の一万二千の峯々がそびえ、その水を集めて前面の平らな岩の左右に谷水が渦巻く。

遠景の鋭い垂直線、中景のやや丸味をおび斜に流れる岩山と、それを彩る松の木々、近景の平らな岩石を取り巻く流れの変化、横に延びる松の枝、それを支える斜めの黒い幹。画面中央に立って峰を指す人物は、実はこの画を描く画家ではあるまいか。耳を澄ますと、ごうごうと流れる川音にまじって、松を渉る風の音が聞こえてくるようだ。

かつて意表をついた鄭●(善に攵)の山水画に驚いた中国の文人も、じっさいに朝鮮に来てみて、彼の画の真実さが解ったと言ったそうだが、現在もその実際の風景を知る人たちは、同じ感想を持つにちがいない。

(金哲央)

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