歌をもって「真実」を伝える/「無窮花の園」著者・安川寿之輔さんインタビュー
2024年04月03日 08:00 文化2022年7月に出版された『朴貞花第二歌集 無窮花の園』は、在日朝鮮歌人・朴貞花さん(85)の作品と、日本近現代社会思想史研究者である安川寿之輔さん(89)の解説で構成された。本書の共著者である安川さんに、書籍発行に至った経緯や、朴さんの詠む歌が秘める力などについて語って貰った。
糸口となる「光」の歌
ー朴貞花さんと出会ったきっかけ、『朴貞花第二歌集 無窮花の園』の刊行に至った経緯について教えてください。
5年前、新日本歌人協会の会員である知人から、朴さんの詠んだ『近代日本の「賢者」福沢諭吉を読む』(本書116P)という作品のコピーが同封された手紙がとつぜん送られてきました。読んでみると、私の福沢論(※50余年に渡って福沢諭吉研究を進め、民主主義の先駆者と謳われる福沢の侵略性や保守性を論証・解明してきた)がそのまま投影されている内容で、衝撃を受けたんです。
朴さんの存在、短歌や俳句について知った後、すぐに朴さん宛の手紙をしたためました。その後も、朴さんがこれまで詠んできた作品の数々に目を通しましたが、差別、蔑視の棄民としての「在日」人生が力強く詠われた作品から学ぶことは多く、戦争責任・植民地支配責任の超希薄な現代の日本社会にかのじょの歌を広く普及させる必要があると思い、歌集の出版を私から提起しました。
ー朴さんの詠む歌から感じた力や、魅力はなんですか?
例えば…
民族の誇りと意思よチマ・チョゴリまとえばすでに心定まる
チマ・チョゴリまといて新宿四丁目信号を待つ吾に百千の眼
(98年10月、『身世打鈴』コンサート)
チマ・チョゴリ切り裂き事件(94年)の後、チマ・チョゴリ排撃の風潮が