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〈若きアーティストたち 93〉クリエイティブデザイナー・成麗奈さん

2013年02月22日 14:20 文化・歴史

人気広がる「ニューレザースタイル」/〝人々の生活に花を添えたい〟

東京・練馬の一角に、一軒のアトリエが佇んでいる。扉を開くとおしゃれな内装にあちこちへと目移りしてしまう。そこは、クリエイティブデザイナーとして、現在はアクセサリー、照明のデザイン、制作を主に活動している成麗奈さん(31)の作業場だ。女性たちの身も心もキラキラ輝かせる成さんのアクセサリーは20代~高齢者まで、幅広い層からの人気を集めている。

成麗奈さん

コンセプトは「ニューレザースタイル」。皮(牛)をあしらったアクセサリーから連想されるものといえばパンクやロックといったハード系のスタイルが多い。「皮が元々好きなのに、自分が求める物があまり出回っていない。カジュアルなスタイルでも、結婚式やパーティーでも合わせられるような、『新しい皮のスタイル』を作りたかった」。

昔から物を作るのが好きだった。手先が器用で裁縫が得意だった母の影響もあってか、編み物や小物作り、ファッションにもこだわった。求める物が見当たらないときは服だって自分で作った。

高級部を卒業後は日本デザイナー学園へと進学。芸能デザイン科で空間ディスプレイを専攻し、2年のうちに設計、図面書き、制作、デッサン、グラフィックデザイン、舞台装飾など幅広いジャンルの知識を習得した。専門学校を卒業後、1年間フラワーアレンジメントの修業を積み、クリエイターとしての世界観を広げようと、叔母のいる英国へ渡った。滞在中は学費、生活費を稼ぐために知人に紹介してもらった美容院でアシスタントを務めた。そこで成さんに転機が訪れるのだった。

その頃、趣味で作ったアクセサリーを身に着けていると「それどこで買ったの?」と美容院に来る客の目を引くことが多々あった。店長の勧めで、店内に作品を展示すると、「あれは誰が作ったの?」「あなたのアクセサリーすてきね。別の色合いで同じ物作れないかしら」と、成さんの作品を買い求める客が増えていった。「それまでデザインといっても漠然としていて、何か一つに本腰を入れることはなかった。でも独学と趣味で作った物が求められることを初めて経験した。すごくうれしかった。あの機会がなかったら今の自分はいないと思う」。

その後、ブランド「RYONA(http://www.ryona.jp/)」を自ら立ち上げ、ロンドンのセレクトショップに作品を卸し、ネット上での販売も開始した。

成さんの作品

07年、4年間のロンドンでの生活を経て帰日、「RYONA」としての活動を本格的にスタートさせた。個展、合同展示会に飾られる成さんのアクセサリーは多くの女性たちの心を射止め、その場で購入する人たちも少なくなかった。「人々の生活に花を添えたい」と話す成さん。来場者たちの「かわいい~!」と笑みがこぼれる横顔を眺めるときが至福の時だという。日本各地の大手セレクトショップや百貨店でも取り扱われ、書道家とのコラボ作品も制作するななど、日々活動の場は広がりつつある。

「今自分が『RYONA』として胸を張って活動できるのも、自分を育て今も支えてくれる同胞社会があるから。自分の名前で作品の人気が高まるよりも、自分の名前が広がることで同胞たちが喜んでくれることの方が全然うれしい」と成さん。以前友人に、結婚式で着るチョゴリ用のノリゲ(朝鮮の装飾品)を作ってプレゼントした画像を見せながら、「これからはチョゴリに似合うアクセサリーなんかも作ってみたい。今から考えただけでわくわくする」と胸躍らせる成さんだった。

(尹梨奈)

プロフィール

東京朝鮮第9初級学校、東京朝鮮中高級学校、日本デザイナー学院を卒業。2003年渡英。2006年にロンドンにて独学でアクセサリーブランド「RYONA」を立ち上げ、2007年帰日後、アクセサリーの他、大手合同展示会などの会場装飾でシャンデリア制作を協賛でするなど、空間デザインなども手がけている。書道家とのコラボ作品を発表するなど、違ったジャンルとの取り組み、また、ウェディングなどの完全オーダーメイドでの制作も行っている。

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