〈本の紹介〉ナイス・レイシズム/ロビン・ディアンジェロ著 甘糟智子訳
2023年12月11日 10:45 文化内在する排外性にメスを
昨今、米国は朝鮮に対して「人権問題」について執拗に喚いているが、朝鮮は幾度となく米国自らの人権問題を省みるよう指摘してきた。本書を通せば、米国における人権問題、とりわけ人種差別が現在もいかに深刻な問題かを理解することができる。著者は数十年にわたって人種差別の啓発を行う過程で真の平等を妨げる原因を「進歩的白人」に見出した。そのなかには米国のジョー・バイデン大統領も含まれている。
本書では「進歩的白人」を「(支持政党に関係なく)自分のことを人種をめぐる意識が進歩的で善良な人間だと思っている白人」と定義している。このような「進歩的白人」の言動のうち、「色の称賛」(「私の親友は黒人です」)と「色の否定」(「肌の色は気にしていません」)はその典型ともいえる。非白人を消費して免罪符を得ようとしているのだ。
本書によると非白人活動家へのアンケートでは、かれかのじょらがバーンアウトする原因が白人の反レイシズム活動家にあるという回答が82%を占める。著者はレイシズムを指摘された時に「進歩的白人」が表す「白人の心の脆さ」(自己防衛反応)を例に、内在するレイシズムを明らかにしている。
さらに、冒頭に書かれた「言葉に関するメモ」で著者は「第一のアイデンティティ」を基準に「男性」「女性」などの言語を使用し、第三の言葉を用いなかった点について「この省略による影響を受ける人々にお詫びする」と述べている。
本書で批判されている「進歩的白人」がはらむレイシズムの問題は決して対岸の火事ではない。解説を担当した出口真紀子教授(上智大)は、「日本人がアジア諸国の中での『白人』」だとして本書を日本人が読むべき一冊と指摘する。
本書の「白人」を「日本人」に置き換えても何ら違和感はなく、「白人」を「男性」や「健常者」に換えて読み進めることで社会や人間の意識にはびこる排外性に気づくことができるかもしれない。私たち在日朝鮮人が「良心的な日本人」と接する際に無自覚なマイクロアグレッションに直面することが少なからずある。それらに対し無自覚ゆえに指摘しづらく、悩み、沈黙せざるを得ないこともあったのではないか。本書はそのモヤモヤを言葉にする上で貴重な参考となる。
(晟)