〈フィマンCUP2023〉子どもたちの未来に繋がる大会に
2023年11月11日 08:01 スポーツ3日、さいたま市の与野八王子サッカーグラウンドで行われた第11回U-9国際親善サッカー大会「フィマンCUP2023」(主催=実行委員会)。埼玉初中の「フィマン」と、同スクールの1年生と茨城初中高の低学年が合同した「セッピョル」を含む48チームが出場した大会には選手、保護者、関係者ら延べ2000人が参加した。
“強豪埼玉”の秘訣
大会は林在嶺さん(39)が代表を務める「フィマンサッカースクール」が2009年に開設され、同年以降、サッカーによる朝・日友好と選手育成を目的に開催されてきた。13年からは埼玉県青商会が「ウリ民族フォーラムin埼玉」に向けた事業の一環で運営に携わり、年々大会規模を拡大してきた。また、これまでの大会には朝鮮学校と日本のチームに限らず、ブラジルやイギリスのチームが参加したことがある。
今大会は48チームの枠に朝鮮学校2校と日本の46チームが参加。予選リーグの順位別に各リーグが組まれた。
先立って9月から10月にかけて埼玉初中で予選リーグが行われ、「フィマン」は1位通過を果たし、大会当日を迎えた。
20年から大会3連覇を果たしていたFCアルコイリス(川口市)が2位リーグに進む波乱の展開で迎えた大会当日、強豪ぞろいの1位リーグはプライドFC(越谷市)が制する結果に。「フィマン」は1位リーグで奮闘するも8位で終え、「セッピョル」は6位リーグ8位で大会を締めくくった。
惜しくも連勝記録の更新を逃したFCアルコイリスの楢原邦明監督(47)は「来年は必ず1位リーグで優勝したい」と意気込む。また、「さいたま市でも珍しい低学年を対象にした今大会でいい成績を残すことはチームの目標のひとつだ。これからを見据えるとこの規模の大会は(子どもたちにとって)良い経験になる」とし、「運営の人たちが居なければこうした経験もできない。協力がありがたい」と謝意を述べた。
息子の成鉉雅選手(小3、フィマン)を応援しに駆けつけた安貞姫さん(44)は「(1位グループは)地域の強豪ぞろいで差を感じたが、諦めずにチームを強化してほしい」と話す。一方で、「大会がここまで大きくなるとは思ってもみなかった」と言う安さんはホストチームである「フィマン」の悲願の優勝に期待を寄せた。
「格上のチームと対戦できたことは貴重な経験だった」と話す「フィマン」の文炯成監督(29)は「子どもたちには、サッカーを楽しんで、好きになってもらえるように心がけている」という。一方、今年の学生中央体育大会では、中級部サッカー部が連覇を果たした。文監督は、「フィマン」の経験が、そうした「成果を発揮する土台になっている」と強調した。
地域の活性化にも貢献
今大会の実行委のメンバーたちは、大会当日、朝早くから準備に取り掛かり、地域の朝青員や朝鮮大学校の学生たち、埼玉初中中級部サッカー部と運営や審判、駐車場の整理まで役割を分担して円滑な進行に努めた。
子どもたちがピッチを駆ける様子に目を細めていた、高柳としや市議会議員(立憲民主党)は、その姿を長年見届けてきた一人だ。高柳議員は「U-9のサッカー大会自体、地域でも珍しい。また、スポーツの交流は心身を鍛えるうえでも大事だが、他方で、日本の子どもたちが在日朝鮮人の子どもたちと日頃から友好関係を築くことは差別意識を芽生えさせないためにも重要なことだ」と述べた。
「フィマン」のコーチであり、審判として運営を支えた金唯成さん(24)は「ウリハッキョのサッカーを発展させ、同胞サッカー選手を輩出することで同胞社会の活性化につなげたい」と次世代育成に精を出す原動力を語る。自身も「フィマン」出身だという金さんは、本大会が朝鮮学校の子どもたちにとって、地域の強豪クラブと対戦することで、成長へのバネとなる「悔しさを味わう学びの機会」になると強調。「幼い頃からサッカーに親しむことで未来の活躍の土台になることを願っている」と語った。
実行委員長を務めた埼玉県青商会の尹致力会長(42)は「10年前に規模を拡大した青商会の先輩たちの気概を継ぐ一心だった」と準備期間を振り返る。そして、「朝・日親善だけでなく、地域の活性化をも担うようになった大会には日本の市民たちからも協賛が寄せられた。このような形式の大会が各地に広まれば嬉しい」と語った。
「フィマン」の林在嶺代表は「大会の認知度をさらに広め、権威ある大会にしていきたい」と意欲を語る。そのうえで林代表は「先代たちがウリハッキョを守るために心血を注ぐ姿を見てきた。これからもサッカーで同胞社会に貢献していきたい」と力を込めた。
(高晟州)