「朝鮮フォビア」に抗い、連帯拡大へ/第2回全国弁護士フォーラム
2023年09月27日 12:14 権利9月16日、朝鮮学校を支援する全国弁護士フォーラム2023 in 愛知が名古屋初級で行われた。第1部シンポジウムでは神戸学院大学の李洪章准教授が講演を行った。パネルディスカッションでは李准教授、愛知無償化弁護団の仲松大樹弁護士、中央大学大学院法務研究科で学び、弁護士を志す河美稀さん(朝鮮大学校研究院所属)が登壇し、愛知無償化弁護団で事務局長を担った裵明玉さんが司会進行を務めた。
「民族/国家とつながること―朝鮮学校の実践を考える」と題して行われた講演では、朝鮮学校差別を生む社会構造や朝鮮学校が民族や国家を重んじる意義について話され、つづくパネルディスカッションでは朝鮮学校差別の問題性をめぐって意見が交わされた。
語り合って協働を
李洪章准教授は講演では、はじめに、一般的に社会学の分野やリベラルの間では民族や国家はナショナリズムという古い概念とされ、朝鮮学校支援者の間でも「マイノリティー教育の促進には賛同するが、『民族』や『国家』を強調する民族教育などの側面には違和感を持つ人がいるのではないか」と問題提起した。そのうえで「『普遍的な価値観』を押し付け」、民族と国家を一方的に「古いと見る視線は危険だ」と述べ、「朝鮮学校の文脈で朝鮮学校を理解する」重要性を説いた。
前提として李准教授は朝鮮学校に対する弾圧の構造は「公益性の論理」に基づく公からの排除と「朝鮮フォビア(嫌悪感情)」にあると指摘。
公からの排除について李准教授は1965年の文部省事務次官通達と2016年の文科省通達を例に解説。現在の日本社会では不特定多数を表す「公」が「国益」という概念に矮小化されているとし、その「公益=国益」の論理で朝鮮学校が弾圧されていると指摘した。また、排外主義者と共にリベラルな人たちが朝鮮学校で民族や国家について学ぶ意義を軽視し朝鮮学校に対して「あらゆる個人に開かれてほしいという欲求」を持つことも「朝鮮フォビア」を支えていると警鐘を鳴らした。
そのうえで、李准教授は学びの場、闘いの場、憩いの場としての朝鮮学校の役割と必要性を訴え、各地の朝鮮学校が「民族の問題」を重視しながら、「人権教育セミナー」などで障がいやセクシャリティなど「個人の問題」も取りこぼさないための実践を行っていると紹介した。
また、朝鮮と朝鮮学校の関係を歴史的に振り返りつつ、「朝鮮学校が民族や国家を追い求めてきたのは奪われた国家を取り戻すための脱植民地化の過程だった」とその関係の意義を強調。加えて、朝鮮学校生徒らは「朝鮮と日本の価値観を自分自身に落とし込み、まとめあげる困難な作業を行っている」と述べ、「グローバルな価値基準で朝鮮学校が仰ぐ祖国を非難すべきではない」と指弾した。
李准教授は最後に、支援においては「お互いの立場性を踏まえつつ、自分自身の不足や葛藤を語り合い、複雑で矛盾に満ちた現実を共有しながら協働していくことが重要だ」と強調した。