〈まるわかり! 法律で知る朝鮮 3〉共和国憲法の魅力②/李泰一
2023年09月21日 08:30 寄稿具体的な人権規定・徹底した人権保障制度
■はじめに
周知の通り、75年前の9月9日は、朝鮮民主主義人民共和国創建日である。朝鮮創建75周年を迎えた朝鮮人民は、現在、幾多の試練を克服し自尊と繁栄の新時代を自らが切り拓いた誇りと自負で胸がいっぱいであろう。世界に国家は多いが、「以民為天」「一心団結」「自力更生」の3大理念を国家の理念とし、それらを明記した主体的な社会主義憲法をもって、一貫して人民大衆の福利増進のための活動を行ってきた国家はまさに朝鮮のみである。
本稿では、朝鮮という国家の人民的性格が如実に表れている朝鮮民主主義人民共和国社会主義憲法(以下、共和国憲法)の人権規定の内容と特徴について若干の考察を試みながら、朝鮮の人権保障制度について解説する。
■人権に対する政府の見解と立場
まず、朝鮮政府が人権についてどのように理解しているのか、そして、その理解をどのように全世界に発信しているのかについて簡単に述べておく。
現在、米国や日本をはじめいわゆる西側諸国による朝鮮に対する「人権バッシング」は危険水位を超えている。経済制裁や軍事的圧力をもっても朝鮮の政権を揺るがすことができなくなったかれらが、次の段階において、人権バッシングに打って出ることは必然的であった。そのことを看破していた朝鮮は、2014年9月13日、朝鮮人権研究会を通じて、朝鮮の「人権白書」とも言える報告書を作成し、自国の人権保障制度を世界に向けて紹介した。朝鮮が人権報告書を発表するのは初めてのことだったので、関係者の中では注目された。
この報告書は、「国際社会」の朝鮮「人権批判」に対して適切な反批判を与えたものといえる。
報告書は、①朝鮮の人権保障制度、②朝鮮の人権享有実態、③朝鮮の立場と努力、④主要難関、⑤朝鮮の人権保障展望の5つの体系から構成されている非常にまとまった報告書となっているが、とりわけ人権に対する朝鮮の見解と立場を叙述した箇所は、その内容が非常に示唆に富む。要約すると、①人権は自主的権利であること、②真の人権の体現者は人民大衆であること、③人権は国権であること、④社会政治的権利・尊厳に対する権利・生存権・不可侵権が基本人権であり、人民が喜ぶなら、それは公正な人権基準であること、の4つを人権と関連した朝鮮の主要見解と立場として提示している。すなわち、人権の享有主体は人民大衆であり、自主権、生存権、不可侵権が基本人権となり、これらの権利が保障されてこそはじめて他の権利も保障されると主張する。そして、これら人権は、自主的な国家政治によって担保されると強調する。人権が国権であるという本質的な意味がまさにここにある。
■憲法の人権規定と人権保障制度
上記、人権に対する朝鮮の見解と立場は、現在の社会主義憲法(2019年憲法)に如実に表れており、憲法規定を具現した徹底した人権保障制度にもしっかりと反映されている。
ここで特筆すべき点は、朝鮮において、人権規定が憲法の中に総合的に規定されるまでの過程が独創的であったということだ。他国においては一般的に、中央議会において憲法や民法という形で基本法をまず制定し、それらの趣旨を部門法で具体化するという方法で法制定事業が行われる。しかしながら、数十年間の日帝植民地から解放された朝鮮では、それまでの立法機構を踏襲すれば、人民大衆の人権を実質的に保障する法律制定は不可能であった。実際、南朝鮮において、日帝時代の支配的統治機構をそのまま踏襲した結果、自主と統一を求める民衆たちの闘争が法律をもって蹂躙され、基本的人権がひどく侵害された史実を私たちはよく知っている。要するに、植民地時代の反人権法を撤廃するだけでなく、人権法を制定しうる土台作りが必須であった。朝鮮では、中央立法機構が作られる前に、地方人民委員会を組織し、人権法制定のための機構をまず設け、個別法の制定を積み上げていき、最後に中央立法機関の新たな創設をもって基本法を制定した。勤労人民大衆自身が政権の主人である人民の国家建設という前人未到のプロジェクトを遂行するにあたって、立法機関のみならず司法機関をはじめすべての国家機構が新しく生まれ変わらなければ、人民大衆の人権保障が絵に描いた餅になってしまう。1972年社会主義憲法の人権規定は、朝鮮建国以来、四半世紀の歳月をかけて、人民に寄り添い、人民の意見を反映させながら一つひとつ積み上げた人権法の集大成であり、それ以降、この人権規定は、幾度の憲法修正があっても今日まで半世紀もの間、一度も変わることなく明文化され続けている。
憲法の人権規定の内容については紙面の関係上、次回に譲るが、その特徴は、①集団的原則、②政治的分野における権利規定(政治的・民事的権利)、③経済文化生活における権利規定(社会経済的・文化的権利)、④特定の集団の権利規定―の独創性にあるといえよう。
そして、朝鮮では、この憲法による人権保障をより具体化するために、①人権法体系(主権機関、刑事関係法、民事関係法、財産関係法、人民保安関係法、労働関係法、教育保健関係法、人民サービス関係法、知的所有権保護関係法、社会福祉関係法、環境保護関係法)、②人権保障機構(国家機構、非政府人権団体)、③人権教育及び宣伝体系(正規的な教育網、社会教育教養施設と宣伝手段、法執行者と社会団体活動家)が整備されている。
整理すると、朝鮮の人権保障制度は、①憲法による人権保障、②人権法体系、③人権保障のための機構、④人権教育及び宣伝体系の4つの柱であるといえよう。朝鮮を人権大国と呼んでも過言ではあるまい。
(朝鮮大学校政治経済学部学部長、教授)