〈関東大震災朝鮮人虐殺100年〉朝・日大学生が主催し集会
2023年08月29日 21:07 歴史なぜ今、朝鮮人虐殺を語るのか
「朝鮮人虐殺の歴史を記憶し、朝鮮人差別を反対する一大行動」実行委員会(以下、「一大行動」実行委)が主催するデモパレードと東京都庁前での行動があった8月21日の夕方には、文京区民センターで関連集会が開かれた。
犠牲者の傷みを想像して
集会では、「一大行動」実行委の徐郁任さん、尹寿仁さん、牛木未来さん、江郷快菖さんが、この間の行動に関する趣旨説明を行った後、関東大震災時の朝鮮人虐殺と現在の朝鮮人差別、また相互の連関性について、日本の朝鮮に対する植民地支配という歴史的な背景を踏まえ、解説した。
牛木未来さん(一橋大学大学院修士2年)は、「関東大震災時の朝鮮人虐殺は、それまでに蓄積されていた日本人による朝鮮人への蔑視感が根底にある」と述べた。牛木さんは、当時朝鮮人に関するデマを事実として流した国の責任を強調しながら「震災時に発布された国の戒厳令は本来、戦争時に軍がすべての権限を握ること。その戒厳令が敷かれることで治安強化を名目とする朝鮮人虐殺の下地ができあがった」と語った。
また江郷快菖さん(東京学芸大学2年)は、今年6月15日の参議院法務委員会で、国家主導の朝鮮人虐殺を示す公文書を、防衛省が保管していると認めた点に言及。同文書は、震災直後に内務省警保局局長から各地方長官へと送られた電信文で、放火や爆弾所持などの「朝鮮人暴動」を事実と認定し、朝鮮人に対する「厳密なる取り締まり」を命じるものだった。
今回、その公文書が保管されていることが明らかになったことについて、江郷さんは「記録がないという政府の主張が覆ったことになる」と述べ、牛木さんもそれに続いた。「私たちが、関東大震災朝鮮人虐殺という明々白々の史実をなぜ学び、行動を起こすのかを今一度考えたい」。
続いて、震災当時を生きた同胞と日本人の証言朗読が行われた後、登壇した実行委員4人によるディスカッション「なぜ今、関東大震災時の朝鮮人虐殺を語るのか~朝・日大学生の立場から考える」があった。
4人は、日本の加害の歴史に一人の当事者として向き合うようになったきっかけや、一大行動を企画・実行しながらの思いを語った。
牛木さんは、日本政府の責任とともに、「日本人自身が排外主義や差別に対して主権者として向き合ってこなかった。目を背けてきた」と述べ、同じ教育を受け、同じ立場にある同世代の日本人に、どう呼びかけるべきかという悩める胸の内を語った。
「今年は関東大震災から100年ということで、朝鮮人虐殺に関するイベントや映画もかなり行われている。しかし自身が差別する側にいると気づいたとき、自分は直接的に関係ないといった感覚をもつ人も少なくない。なぜそういった考えになってしまうのか。歴史の問題には、加害者がいれば被害者もいて、その家族がいる。その人々への想像力が圧倒的に欠如している。私たち日本人は、あらゆる差別のうえに、自分たちの生活が成り立っていることへの認識をもつ必要がある」(牛木さん)
また今年9月に公開される関東大震災時を描いた映画「福田村事件」にも言及し、「受容されやすい」テーマを扱うことへの疑問も投げかけた。
「どうして虐殺された朝鮮人ではなく、日本人が巻き込まれたという形で作品が作られるのか。