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〈関東大震災朝鮮人虐殺100年〉関連企画展はじまる/東京・高麗博物館

2023年07月11日 09:33 歴史

引き受けた“後世に伝える役割”

虐殺現場が描かれた絵巻物の一部(企画展示の図録より)

東京・新宿にある高麗博物館(以下、高麗)は、現在約700人弱の会員らで支えられる「市民らの市民らによる博物館」だ。同博物館で、今月5日から企画展示「関東大震災100年―隠蔽された朝鮮人虐殺」がスタートした。歴史修正に事足らず、歴史否定主義が跋扈する日本で、関係者たちは、いまこそ加害の歴史に正面から向き合う必要性を切に訴える。

自分自身の問題として

5日の展示初日には、高麗関係者らによる会見が行われた。本展示プロジェクトチームのメンバーである小川哲生さんは会見で、2003年、04年、18年に続き、関東大震災朝鮮人虐殺と関連する企画はこれで4回目だと説明。そのうえで今回の展示は、①虐殺現場が描かれた絵巻物「関東大震災絵巻」(作・淇谷(きこく))の一般公開、②歴史否定への抵抗、③真相究明と政府への謝罪や賠償を求める市民の動きを紹介するという主な特徴があると話した。

会見で発言する前館長の新井勝紘さん(中央右)

展示では、当時の朝鮮人虐殺に連なる前史や、地震発生後の流言飛語と国の戒厳令、デマを垂れ流した日本メディアの責任などを問うたⅠ「関東大震災と朝鮮人虐殺」、初公開の絵巻物などからなるⅡ「描かれた朝鮮人虐殺を読み解く」など全5つのセクションごとに関連パネルが設けられた。

この日の会見には、南朝鮮の植民地歴史博物館から野木香里さん(専任研究員)も参加した。同館は18年、ソウル・龍山に設立された市民博物館で、南の民族問題研究所がその中心となった。野木さんは「韓国では関東大震災に関する展示が本格的に行われたことはなく、00年代からキリスト教系の市民団体が、真相究明や追悼の活動に取り組み始めたのがはじまり」だと話す。

前述の市民団体は、高麗の展示内容を訳す形で07年、南の国会で企画展を開催。今後、同博物館では、南の同胞たちが自分自身の問題として関東大震災朝鮮人虐殺を捉えることができるよう、さまざまな企画を準備中だという。来月から高麗との連携企画展として「隠ぺいされた虐殺、記憶する市民たち」が行われるほか、今回の展示では、南での真相究明と追悼の取り組みに関するパネル作成に協力した。

記された省慮の念

絵巻物「関東大震災絵巻」(作・淇谷)

会見では、絵巻物をオークションサイトで発見し、本展示での公開を決めた高麗・前館長の新井勝紘さんからも発言があった。同氏は、大学教員として十数年を勤め、それ以前は国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市、以下歴博)で近現代展示を担当していた。その間、歴博では、関東大震災について常設展示をしようとなり、新井さんら関係者たちは、議論の末に「朝鮮人虐殺を避けて通るわけにはいかない」として、当時の虐殺に関するコーナーをつくったという。それが契機となり、関連資料を集める過程で、新井さんは朝鮮人虐殺を描いたとある絵をみつけるに至った。

企画展示「関東大震災100年―隠蔽された朝鮮人虐殺」が始まった

「東京都復興記念館に調査に行ったとき、収蔵庫の中に埋もれる本横小学校の子どもたちのアルバムを手に取った。その中に子どもたちの絵が収録されていて、ある子どもが

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