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〈高校無償化〉愛知国賠訴訟、原告の思い、「なぜ僕たちだけ?」

2013年01月29日 10:15 民族教育

「高校無償化」制度から朝鮮学校だけが除外されている問題で、日本国を相手取り、慰謝料の支払いを求める訴訟を起こした愛知朝鮮中高級学校生徒、卒業生が、提訴に際し、それぞれの思いを綴った文章を弁護団に託した。提訴後の記者会見で代読された。以下、文章を紹介する。

原告A

2010年4月から「高校無償化」が実施され全国の日本学校及び「一部を除く外国人学校」に適用されました。その一部が朝鮮学校です。しかも現在も朝鮮学校だけが適用外とされています。僕は最初その知らせを聞いた時、怒りより先に「なぜ?」という思いが先立ちました。その後「どう考えてもおかしい」という思いとともに、街頭宣伝や署名活動を幾度となく行ってきました。その過程で自分自身気づいたことがあります。

それは、この問題が単純なお金の問題ではなく、朝鮮人としての尊厳を踏みにじられた差別だということです。僕たち朝高生は、日本の高校となんら変わりない授業を受けて部活動もして、「健全な学校生活」をおくっています。違いは朝鮮人として朝鮮学校に通っているということだけです。

朝鮮と日本の歴史をみると外交上様々な衝突があると思いますが、僕らの学ぶ権利とは無関係だと思うのです。しかし、日本政府は2010年から今日に至るまで、「適用する方向」だと言ってみたり、「適用を延期」、「凍結」だと言ってみたり、そういった情報の中で僕たち学生は精神的にとても疲れ、混乱の中で生活してきました。また政権が変わった昨年末、朝鮮学校には「無償化」を適用しない方針を固めました。僕はもう怒りを抑えることができません。僕たち学生の気持ちをどこまでもてあそび、傷つければ気が済むのでしょうか? この行き場のない気持ちをいろいろな人に知ってもらいたいです。「無償化」が適用され一日も早くこういう苦悩から解放されることを望みます。

原告B

「高校無償化」の適用対象から朝鮮学校が除外され、4年が経とうとしています。街頭での署名活動やビラ配り・・・

日本政府に必ず声が届くことを信じて、暑い日も寒い日も、部活を中止してまで出かけました。 「適用のための審査をする」と私たちの学校にも文科省の方々がいらっしゃいました。やっと努力が報われるのかと、とても嬉しい気持ちでした。

しかし、その「審査」も外交上の問題で停止に。政権が自民党に代わった今、ついに朝鮮学校は「無償化」の対象から完全に除外されようとしています。本当に寂しく空しい。

私たちはスパイでも工作員でもありません。かつての日本国による植民地支配の負の遺産-在日コリアン3世、4世-の学生です。母国の言葉、歴史や文化を学ぶ権利は、誰にでもあるのに。朝鮮学校の学生たちは日本の政府により、何度も大切な気持ちを踏みにじられました。決して許しません。

原告C

「高校無償化」から朝鮮学校のみ除外されて当初自分は単純にその事実に疑問を抱きました。自分たちはこの制度を通して父母の負担を少しでも軽くすることができると期待したものです。ところがなぜ未だに朝鮮学校のみ「無償化」から除外されたままなのでしょうか?

とても疑問です。除外される理由の中に「教育の内容が明確でない」という指摘がありました。自分たちが在日朝鮮人としてのアイデンティティーを確立していくために自分たちの国の言葉、歴史を勉強し使うことは、そんなにもいけないことなのでしょうか?

「朝鮮学校は、朝鮮総聯の指導を受けており、総聯は北朝鮮の指導を受けているからだめだ」とされることもありました。教育と政治を混同してはいけないという日本政府の言葉は偽りなのでしょうか?

この問題と向き合うにつれ当初の疑問は憤りへと変わりました。

「高校無償化」適用を求める今までの闘いは長引くにつれて自分たちから一つ、また一つ下の代へとその苦しみが広がっていっています。

自分たちの代でこの苦しみを終わらせる事が出来なかったことが本当に心残りだと胸を痛めながら僕たちは当時卒業をむかえました。決して許すことができません。

僕たちは決してあきらめません。正しいことが正しいと認められる事を信じて。

原告D

当初「高校無償化」の話を聞き父母や学校の負担が減ると思い友だちとともにすごく喜んだ事を鮮明に覚えています。

ですが朝鮮学校だけ適用されないと聞いた時にとても残念に思いました。

と同時に、日本政府に対する怒りすら感じ、絶対あきらめてはならないとも思いました。

それからは署名活動や街頭宣伝など、たくさんの活動を行いました。その中で学校や父母だけではなく、日本の弁護士の方やたくさんの日本の方にも協力していただきました。

僕たちのためにこんなにたくさんの活動をしていただく事に対し本当に感謝していましたし、この恩を返すには最後の最後まであきらめることなく、問題にぶつかっていくこと、そして必ず「無償化」を実現させることだと思いました。そして何度も「無償化」が実現されると思った矢先に、何かと政治的な問題を理由にことごとく先送りされてきました。

結果、昨年末の選挙で自民党が勝ち、「無償化」はしないと断言されました。

すごく残念です。それと今まで協力していただいたたくさんの方々に申し訳ない思いでいっぱいです。今までやってきたことがすべて無駄だったかと思い涙を流す子もたくさんいました。

なぜ僕たちだけなんでしょうか? 学んでいることは日本の学校と変わらない。

母国語を話し、母国についても学んでいる。これがダメなんでしょうか?

それなら他の適用済みの外国人学校と同様、「無償化」すべきではないんでしょうか?

朝鮮総聯と関係があってはならないといいますが何故でしょうか? 学校のために本国からの支援があってもいいんじゃないでしょうか?

今までやってきた活動を含め、この怒りや悲しみをどこにぶつければいいのですか?

今回の裁判ですべてが「正しい方向」に向かう事を切に願います。

原告E

高校3年生の夏にあった出来事を私は今でも時折思い出します。

街頭で朝鮮学校を「高校無償化」から外す事に反対するビラ配りや署名活動をしていた時でした。焼けるような日差しの下、私たちは一生懸命通りかかった人たちに訴えました。その訴えに返って来たのは、「そういうのいいから」という日本の方の一言でした。もちろん応援してくれる方々はたくさんいたのですが、その一言でどれだけ私たちの心が痛んだかわかりません。まるで私たちに学ぶ権利なんてあるはずがないだろうとでも言うかのように、その日本の方は去って行きました。

あれから私たちは高校を卒業しました。

この間、日本政府は政治的問題を教育と結びつけて朝鮮学校に通う子どもたちに希望を見せたかと思うと、それをことごとく打ち砕いてきました。

私は朝鮮学校で学ぶ後輩たちが私たちと同じつらい思いをしていると思うと胸が張り裂ける思いです。それなのに、今、日本政府は自らが定めた法を変えてまで朝鮮学校に通う子どもたちの未来を奪おうとしています。こんな事がなぜ許されるのでしょうか?

学ぶ権利はすべての子どもたちに与えられる権利のはずです。私は日本政府に遺憾の意を表すとともに差別をなくし、朝鮮学校にも「無償化」が適用されることを心から望みます。

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