〈在日発、地球行・第3弾 1〉横たわる経済構造のジレンマ/モザンビーク
2023年07月05日 09:01 在日発、地球行
アフリカと聞いて、何が思い浮かぶだろう。貧困、飢餓、紛争、汚職など、ネガティブなイメージを連想する人たちは少なくないはずだ。そうして無意識のうちに、想像上の対象と自分との間に「境界線」を引いているのかもしれない。しかし、目の前に横たわるボーダーを自ら飛び越えて行けば、その先には新たな視野が開けてくるものだ。過去にアジア、ラテン・アメリカ、中東などの国々を旅した経験を連載「在日発、地球行」で綴ってきたが、今回はアフリカへの旅に出ることにした。最初の目的地は、南部アフリカに位置するモザンビークだ。
過去の連載記事はこちらから▶︎ 在日発、地球行・〈第1弾〉、 〈第2弾〉
豊富な資源誇る世界最貧国
正式名称:モザンビーク共和国。首都:マプト。人口:約3,380万人。国土面積:79.9万平方キロメートル(朝鮮半島の約3.6倍)。言語:ポルトガル語。民族:マクア・ロムウェ族(全人口の約40%)を含む約40民族。渡航方法:朝鮮国籍の筆者は外国の大使館でシングルビザを約1ヶ月で取得(60$、2022年10月時点)、カタール経由で渡航。

モザンビークがどのような国か、具体的なイメージを描ける人はあまり多くないだろう。アフリカ大陸の南東部に位置する同国は6カ国と国境を接し、インド洋に面した南北に2,000kmも続く美しい海岸線を有している。とりわけ鉱物や石炭など地下資源が豊富だ。にもかかわらずモザンビークは、世界最貧国の一つに数えられている。ここで関心を持った点は、同国が貧困に陥るに至った根本的な原因である。
1975年にポルトガルの植民地支配から独立したモザンビークは社会主義建設の道を目指したが、長年続いた内戦によって社会基盤が脆弱になり、西側諸国からの支援に頼らざるをえないほどに経済活動が停滞したとされている。一連の大まかな流れに関する情報を除き、筆者はモザンビークの歴史に関する深い知識を持っていなかった。そのためモザンビークに向かう飛行機の中では、同国の歴史に関する書籍を読みふけった。
ふと機内を見渡すと、西洋人観光客が多いことに気づいた。横に座ったモザンビーク人の中年男性に聞いたところ、同国の海岸線には観光客に人気のビーチが点在し、透明度の高い海はアフリカ屈指のダイビングスポットとして有名だそうだ。海洋保護区では色鮮やかなサンゴ礁を楽しめるだけでなく、ジンベイザメやマンタにもお目にかかれるし、首都マプトにはポルトガル占領時代のコロニアル建築が色濃く残る「世界で最も美しい駅」があるという。

「世界で最も美しい駅」の呼び声高い首都マプトの鉄道駅。ここから発車する列車で、近隣諸国へと向かうことができる。
やけに詳しいと思っていたら、かれの仕事は観光業だった。かれは、おそらく過去に日本からの観光客に用いたであろうフレーズを使い、こう教えてくれた。
「おすすめのリゾート地は『トーフ』だ。発音が似ているけど『豆腐』じゃないよ」
そうこうしているうちに、飛行機はモザンビークの首都・マプトの空港に着陸した。
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