〈読書エッセー〉晴講雨読・小説『探究者の生涯』と『現代朝鮮の科学者たち』/任正爀
2023年06月28日 09:00 寄稿朝鮮を代表する科学者はと問われて、多くの人は李升基博士を挙げる。しかし、植民地時代、自身を取り巻く厳しい状況のなかでも高い教養を身に付け、朝鮮の科学技術発展のために献身奮闘した人たちは少なくない。今回はそんなかれらの姿を伝える2冊の本を紹介しよう。

『探究者の生涯』(日本語版)
まずは、小説『探究者の生涯』である。植民地時代、大学卒業生の多くは相対的に裕福な家庭で育った人たちである。そんななかで、炭焼きの貧しい農家に生まれ朝鮮を代表する科学者となった農学者・桂応祥博士の人生は壮絶で、それを小説としたのが『探究者の生涯』である。
村の書堂を終えて19歳でのソウル五星中学の入学をスタートに、恩師の援助による日本への渡航と九州帝大の苦学生活および助手としての研究活動、