群馬追悼碑集会/安田浩一さん講演・登壇者の発言
2023年05月27日 14:04 歴史安田浩一さん講演
「負の歴史も振り返る力を」
21日、群馬県前橋市の県教育会館では、「記憶・反省そして友好」の追悼碑第19回追悼集会、追悼碑を守る会2023年総会に続いて、「改ざんされる歴史と記憶~歴史否定の現場を取材して」と題した講演会が行われた。ジャーナリストの安田浩一さんが講師を務めた。
安田さんは、週刊誌の記者を経て、現在はフリージャーナリストとして日本各地のヘイトスピーチや外国人労働者問題に関する取材を行っている。
講演では、安田さんが実際に取材した10の現場と、それらに共通する問題点について話した。
安田さんは講演の冒頭、ここ数年物議を醸している出入国管理及び難民認定法(入管法)について言及。外国人排除が入管法の本質であり、それをさらに深刻化させる改正案は「悪辣であり、絶対に認めてはならない」と語った。
関東大震災時に朝鮮人が100人近く虐殺された歴史を持つ埼玉県本庄市の旧本庄警察署についても話した。1883年に建てられた旧本庄警察署は1980年以降、歴史民俗資料館に改良され、そこに関東大震災虐殺に関する資料が保管されていた。しかし、3年前に資料館は閉館し、安田さんが資料の行方を追ったところ、同市の持つ収蔵庫に収められ、誰も見ることのできない状況になっていることが分かったという。
その他にも安田さんは、関東大震災朝鮮人虐殺に対する東京都の不誠実な対応についても言及した。講演中、初めて知る歴史否定の現実に対して参加者からは、何度も驚きの声が上がった。
この日、安田さんが繰り返し強調したのは、日本の歴史否定的な風潮だ。「歴史を省みない、学ばない」日本社会の危険性を訴え、「美化されたものばかりが残っている」と主張。「負の歴史も含めて、振り返る力を養わなければならない」と警鐘を鳴らした。
また、安田さんは「私たちの社会は、朝鮮人強制労働者や虐殺被害者の記憶や記録、苦痛をすべてなかったことにしようとする。群馬の森の追悼碑もこのままではなかったものにされてしまう。そうならないように、力を合わせこの抗争に勝ち、絶対に追悼碑を守りぬこう」と力強く呼びかけた。
安田さんは最後に、「歴史否定の原点は外国人や、とりわけ朝鮮半島にルーツを持つ人々に対する差別である」とし、「差別や偏見の向こうに待っているのは、虐殺や戦争だ。私たちはそうした差別を断ち切り、正しい歴史認識を守りぬかなければならない」と話し、講演を締めくくった。
登壇者の発言
角田義一さん(守る会共同代表)
「対話」の先の平和叶える場に
無念の思いで亡くなった朝鮮の人々は、安らかに眠れず、これからの朝鮮半島と日本の行方を憂慮しているだろう。日米韓の3カ国は朝鮮に対する抑止力の強化を図り、直近で出した共同声明には「対話」という言葉が一切見受けられない。抑止といっても、あくまでも軍事力に頼った抑止であり、朝鮮や中国、ロシアと戦争する準備を進めているようなものだ。朝鮮の平和は関連国が対話をして初めて訪れると思う。この追悼会が群馬の追悼碑の前で、南北の代表が共に追悼する夢を叶える場になってくれれば嬉しい。
石川眞男さん(玉村町町長)
歴史を学び未来に繋げる
歴史の事実を見据えることがそんなに難しいのか。朝鮮通信使など江戸時代の日朝の豊かな交流を学べば、違った景色が見えてくるのではないか。歴史にはいろいろな波があるが、歴史を学ぶことで、日朝の関係は新たな局面が見えてくると思う。この追悼会は、歴史を学び未来に繋げる会である。
李和雨さん(総聯群馬県本部委員長)
過去の誤りを認め正す
強制的に異国に連れてこられ、過酷な民族差別のなか強制労働の現場や、戦場に連れていかれ亡くなった同胞たちは紛れもなく日本の植民地支配の犠牲者である。
戦後78年がたつ今も、植民地政策の実態は明らかになっておらず、それどころか、強制連行や侵害の歴史はなかったとする危険な風潮のなかで、私たち在日朝鮮人はヘイトスピーチや憎悪の煽りを受け、民族差別の対象となっている。民族差別と植民地政策は現在まで続いており、過去の問題とはいえない。過去の誤りを認め正すのは今に生きる私たちだけがなしえることだと考える。
加藤昌克さん(追悼碑裁判を支える会共同代表)
犠牲者追悼の実質的答えを
1946年に公布された日本国憲法の背景には、理不尽な死を遂げた人々が存在し、教育基本法も同様にたくさんの犠牲の上に成り立っているものだ。その死者の中には、今日私たちが追悼を捧げる強制連行で連れて来られて理不尽な死を遂げた朝鮮人も含まれる。日本国憲法を守っていくことが、犠牲者への追悼の実質的な答えであると私は考える。