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〈トンポの暮らしを支える/こちら同胞法律・生活センターです! 30〉開設から25年―これからも同胞に寄り添う相談所として

2022年12月15日 15:44 寄稿

25年間積み重ねてきた相談、啓発活動

在日同胞の生活と権利の擁護を目的として、1997121日、東京・台東区にオープンしたNPO法人同胞法律・生活センター(以下センター)は、今年で開設25周年を迎えました。この間、「同胞の、同胞専門家による、同胞のための相談所」として、同胞の弁護士をはじめ司法書士・行政書士、税理士・公認会計士・社会保険労務士・社会福祉士・ケアマネジャーなど、様々な分野の専門相談員たちが、同胞の暮らしや経済活動の中で直面する様々なトラブル、生活上の悩みなど、多岐にわたる相談を受け付け、解決のためにサポートを行ってきました。

開設当初は朝鮮半島にルーツをもつ特別永住者や永住者などの在留資格を持つ同胞からの相談が大半を占めていましたが、センターの認知度が高まるにつれ、結婚などで同胞と関わりのある日本人、いわゆるニューカマーの同胞、中国やフィリピンなどその他の外国籍の人、日本人の弁護士や司法書士などの専門家や金融機関、地方自治体などからも相談が寄せられるようになりました。また、アメリカやスイス、フランス、オーストラリア、タイなど海外在住の同胞からも電話やメールで相談があります。週に1回行われている弁護士による法律相談には、東京・千葉・埼玉・神奈川などの関東地域だけでなく、福島や宮城など遠方にお住いの同胞が来所されることもあります。また、日本各地より電話による相談も受け付けています。

相談活動だけでなく、啓発活動にも努めています。これまで同胞にむけた「知って得する」講座や各地の同胞機関への出張セミナーなど、様々な企画を開催してきました。コロナ禍のため大勢で集まることが難しくなった2020年からは、各地の同胞生活相談所の関係者たちがオンラインで繋がり、同胞たちが利用しうる新型コロナウイルス対策として日本政府が行う各種支援や関連制度など、同胞たちに有意義な情報を提供できるよう学びを深める場を設けています。

センター開設20周年を迎えた2017年には、同胞たちが「ゆりかごから墓場まで」人生の節目節目で直面する生活・法律上の問題をわかりやすく解説した生活便利帳・「とんぽらいふ」を発行しました。「とんぽらいふ」は紙ベースの冊子だけでなくその内容をウェブサイトにも掲載し、スマートフォンやタブレットを用いて、いつでも、どこでも、気軽に知りたい情報を得られるようにしています。

これからも在日同胞の「頼みの綱」として

センターに寄せられる相談は、交通事故や金銭トラブル、多重債務など、日常生活を営む上で誰にでも起こる可能性のある問題から、相続、国籍、家族関係登録簿、在留資格、婚姻手続き、新在留管理制度に関わる諸問題など、同胞ならではの相談まで、多岐にわたります。

近年、日本社会でインターネットやSNSを介して気軽かつ手軽にアクセスできる相談窓口や情報サイト、そして弁護士や弁護士事務所が増加したこともあってか、センターにおける弁護士による法律的な解決が求められる相談は減少傾向にあります。一方で、身寄りのない同胞高齢者に関わることや障がいを抱えた親族の生活周辺の問題、生活困窮など、日々の生活に関連する福祉分野の相談は、長引くコロナの影響もあり、多くなっています。

また、配偶者が勤め先のスーパーでセクハラ被害に遭った、日本の学校に通う子がいじめの被害に遭ったが学校側と対応するうえでのアドバイスを得たい、職場の同僚が上司からのハラスメント的言動に悩まされて自身も辛いといったハラスメントに関わる相談も増えています。

この2年の間は海外で生活する同胞から、「みなし再入国許可」を含め、日本への再入国許可期限が迫っているが、コロナ禍による渡航制限などを鑑みると渡日しての諸手続きが難しい、このまま期限を迎えると特別永住者資格はどうなってしまうのかといった相談がメールや国際電話などで寄せられました。

全体的な相談件数は減少傾向にあるものの、センターが在日同胞ならではの相談の受け皿になっているのも事実です。

「同胞ならでは」―在日同胞が日々の暮らしのなかで直面する問題には、植民地支配から解放されても現在にいたるまで継続する日本政府の在日同胞に対する差別政策や祖国の分断、また朝鮮半島と日本の政治外交的関係性そして日本社会で根強く再生産され続ける民族差別など、在日同胞の背景にある歴史的、政治的な問題が複雑に絡まっているケースが少なくありません。そうしたことから、日本の法律に加えて南北朝鮮の法律や制度に精通していて、かつ在日同胞固有の背景を理解し寄り添うことのできる様々な分野の同胞専門家を相談員とし、四半世紀もの間相談の経験を積み重ねてきたセンターが、在日同胞の「頼みの綱」として果たせる役割は大きいと感じています。どこで相談しても行き詰ってしまった、どんなサイトや書籍を検索しても答えが見つからなかったという方々から、センターにたどり着くことができてほっとしたという言葉を聞くたびに、センターの存在意義と存続の必要性を感じています。

センターではこれからも、同胞が抱える悩みや相談に寄り添い、伴走しながら解決にむけてお手伝いしていくとともに、『朝鮮新報』をはじめとしたさまざまな媒体で同胞の暮らしに役立つ情報を発信し同胞たちから寄せられた多岐にわたる相談の蓄積と経験を同胞社会に還元する活動を行い、同胞一人ひとりが日本社会でいきいきと生活していくために尽力していきたいと思っています。お気軽にご相談ください。

(宋恵淑、NPO法人同胞法律・生活センター事務局)

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