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新校舎建設にかける関係者の思い/川崎初級

2023年05月10日 09:21 民族教育

共に切り開く未来

学校創立77年を迎える川崎初級で、新校舎建設に向けた事業が本格的に始まった。4月23日、同校で開催された「KAWASAKI大感謝祭2023」のフィナーレでは、1350人の来場者らを前に「これからも地域の在日同胞、日本の方々と手を取り合い、民族教育がこの川崎の地で100年続くように、頑張っていきたい」と決意した姜珠淑校長。昨年5月に発足した新校舎建設委員会は現在、この校長の決意を共にし、同事業を力強く推し進めている。

生き抜いていく証

川崎初級で新校舎建設事業がスタートした

川崎光明学院をはじめとする国語講習所の開設と共に、川崎での民族教育が、その産声をあげた1945年。翌年の46年11月1日には川崎初級の前身・川崎朝聯初等学校が、市立大島小学校の教室で開校した。工業地帯である川崎は、多くの朝鮮人が強制連行や徴用、出稼ぎで拠点を置くようになった歴史的背景もあり、この地の同胞たちにとって学校はまさに「朝鮮人としての誇りを胸に生き抜いていく証」のような場所だった。

鉄筋4階の現校舎が建ち今年で53年。校舎が老朽化の一途をたどるなか、その「証」を守り抜くために新校舎建設事業に向けた協議がスタート。それは、今から約3年前、2020年3月のことだった。

校長や同校教育会の役員らによる協議は、同年12月から本格化。22年5月8日、総聯や女性同盟の支部と分会、商工会、青商会、朝青など地域の団体役員らと、同校の教育会、アボジ・オモニ会役員を含むおよそ40人からなる新校舎建設委員会(石昌鎮委員長)が発足した。

以来、建設委では「同胞、学校、地域社会と共に切り開いていこう、私たちの未来!!」(동포, 학교, 지역사회《와》 함께 펼쳐가자, 우리 미래!!)をテーマに、「かわさき『WA』プロジェクト」の名目で新校舎建設事業を推進している。

「つながり」を意味する「《와》(WA=~と共に)」には、「子どもたちが在日朝鮮人として学び育ち、同胞たちが集い、日本社会と結ぶ場」としての川崎初級を、みなで守り、未来へ引き継いでいこうという学校関係者らの思いが込められた。

地域に根ざすハッキョ

同胞らの活気であふれた「KAWASAKI大感謝祭2023」

「今日集まってくれたほとんどが日本の方々なんです。いまでは地域の恒例行事となった交流祭を重ねる過程で、川崎の同胞たちと地域の日本の方々が親交を深めてきた。そうした積み重ねがあって、今のにぎわいがある」。

「大感謝祭」の日、集まった大勢の人々を見渡しながら、そう語ったのは建設委員会委員長の石昌鎮さん(49)だ。

姜珠淑校長

現在市内には、南部の川崎区に川崎初級が、北部の高津区に南武初級がそれぞれあるが、とりわけ川崎初級に通う子どもたちは、学校付近に住んでいる場合が多く、昔からこの地の人々にとっては「自転車や徒歩での通学風景が日常だった」。さらに近年、学校や家庭のみならず、地域社会とも連携した教育の必要性がうたわれていることに、石さんら建設委は着目。「地域に根ざしたハッキョ(学校)」を、「かわさき『WA』プロジェクト」のビジョンに掲げた。

「ウリハッキョだからできるネットワークづくりや、同胞社会と地域社会への貢献方法があるはず。今回の新校舎建設事業が、子どもたちのため、学校のため、地域のためになる学校づくりの契機になれば」(石さん)。

一方で協議をはじめた当初には、困難も伴ったという。石さんらは、過去に校舎建て替え経験のある他地域の朝鮮学校を訪ねては、現地の関係者に話を聞いて回った。しかし、いざ事業をはじめようとなったとき、建設委のメンバーに名乗り出るものは、そう多くなかった。

「資金集めにしてもそうだが、そんな簡単なことではない。当時の状況は十分に予想できたことだったが、だからといってやらない訳にはいかない。自分たちの世代がやらなければ、次の世代ができるはずがないでしょう」(石さん)

黄景哲さん

そうして石さんら40代後半の卒業生を中心とするメンバーたちが立ちあがった。「委員長なんて名前だけで、みながやろうといってくれたから、できたことだ」と石さん。「いつかまた、こうした転機に直面した時、次の世代が立ち上がれるよう、姿で示したかった」と照れくさそうに笑った。

現在、建設委では、①財産管理建設部、②宣伝広報募金運動部、③会計部、④教育環境部の4つの部会を設け、事業を進めている。4つの部会は「単に校舎を建てるだけではダメ。どうやったら長きにわたり学校と地域コミュニティを守ってきた同胞たちがこの事業を理解し、引き続き川崎ハッキョを守っていけるのか」という、委員たちの問題意識から設置された。なかでも、宣伝広報募金運動部が中心となり花見や感謝祭、今後予定される運動会など、同胞たちが集まる場を設け、大々的な募金運動もスタート。その根底には「一部の世代や、一部の人がやる事業ではなく、川崎における民族教育の未来のために、この地の同胞たちが『みなで一緒にやる』事業」として新校舎建設事業を進めたいという、建設委員ら共通の思いがあった。

建設委事務局長で、現在、同校教育会理事を務める黄景哲さん(46)は語る。

「財産管理建設部会では、今後の運営にあたり、どうすれば保護者たちの学費負担を減らせるのか、いかにして収益化を実現するかなど、財政問題を解決し教育環境を整備するためのあらゆるサポートについて議論を重ねている。今はウリハッキョの生徒数が何十人単位で増える時代ではないかもしれない。けれどこの学校で、何をしていくことが最善なのか。また何ができるのか。地域や同胞たちから愛される、国際交流の見本になるような学校づくりを進めていきたい」

一つの支部、一つの学校

川崎初級の運動場で駆け回る子どもたち

新校舎建設に向けた取り組みは、同校で教鞭をとる現役の教員たちにとってどのような意味を持つのか。教員42年目、川崎で17年目を迎えた梁清姫教員は「それは一つしかない」と語気を強める。

「川崎支部は、同胞数が県内でも最も多い大きな支部だ。川崎の同胞たちが、代々にわたり紡いできた歴史と伝統を継いでいくためには、支部と共に学校という拠点が必要。これに尽きる」。学校創立70周年記念事業を進めた当時、「80年、90年、100年まで続く学校にしよう」と奮い立った同胞たちの思いを、現実にさせるための取り組みが「他ならぬ新校舎建設だ」と話す梁教員。同校の教員たちにとって、大きな励みであり力となっているのが、建設委をはじめとする「きょうだいのように仲よく、学校愛が強い」卒業生たちの存在だという。

また総聯神奈川・川崎支部の河東鎮委員長も、「民族教育を体系的に受けて育った建設委員たちが、民族教育を守り発展させるための今事業の中心にいることが、何よりも大きな意味を持つ」と述べたうえで「かれらと共に、歴史ある川崎の地で、一つの支部・一つの学校の伝統を守っていきたい」と語った。

(韓賢珠)

【お知らせ】

川崎初級では新校舎建設事業への募金協力を呼びかけている。

  • 振込先=ハナ信用組合 川崎支店 普通預金
  • 口座番号=1111842
  • 口座名=川崎WAプロジェクト実行委員会
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