戦争抑止を使命とする朝鮮の戦術核
2022年07月11日 08:20 共和国“作戦任務に応じて異なる手段として使用”
朝鮮は、現代戦において作戦任務の目的と打撃対象に応じて異なる手段として使用することができる戦術核兵器の開発に尽力してきた。朝鮮半島とその周辺の地理的条件、朝鮮人民軍の作戦構想に基づいて独創的に開発された戦術核兵器の使命と任務は戦略核兵器と同様である。敵の軍事的威嚇と挑発を統制し、朝鮮の安全を守る核戦争抑制力として機能することだ。
高度化する核技術
「我々が保有する核兵器は、小型化・軽量化・多種化・精密化された威力ある戦争抑制力だ」(労働新聞、2013年5月23日付)、朝鮮は以前からそのように主張してきた。
「これまでとは異なり、爆発力が大きく、小型化・軽量化された原子爆弾を使用」して、第3次地下核試験が実施(2013年2月12日)されてから3ヶ月後、労働新聞に核兵器に関する論説が掲載された。
新聞は、核兵器が破壊力と射程によって戦略核兵器、戦術核兵器に分類されるとしながら、戦略核兵器は相手側の大都市と産業中心地、指揮中枢と核武力集団など戦略的対象物を打撃するための核爆弾とその運搬手段からなる兵器であると説明した。戦術核兵器は、前線や作戦戦術的中心地帯にある有人力量と火力機材、戦車、艦船、指揮所などを打撃するための核爆弾とその運搬手段からなる兵器であるとした。
核兵器を小型化する目的については、次のように説明した。 「核兵器の爆発力が大きいことが、必ずしもよいことではない。前線と後方、敵味方の間に厳格な境界線がなく、立体的に繰り広げられる現代戦において、このような兵器を使うのは実質的に困難である…」
朝鮮では核技術の高度化がたゆまなく進んでいる。 2021年1月に開催された朝鮮労働党第8回大会では「核兵器の小型軽量化・戦術武器化をより発展させ、現代戦で作戦任務の目的と打撃対象に応じて様々な手段で使用できる戦術核兵器の開発」を課題として示した。
党大会の決定は滞りなく遂行されているようだ。
今年4月、金正恩総書記が見守る中、新型戦術誘導兵器の試射が行われた。朝鮮はこの兵器システムが「前線長距離砲兵部隊の火力打撃力を飛躍的に向上させ、戦術核運用の効果性と火力任務多角化を強化する上で大きな意義を持つ」(朝鮮中央通信)ことを明らかにした。
前線部隊の作戦任務追加
2ヶ月後に開かれた会議が国内外の注目を集めた。
金正恩総書記の指導のもとに行われた党中央軍事委員会第8期第3回拡大会議(6月21~23日)で、朝鮮人民軍前線部隊の作戦任務に「重要軍事行動計画」を追加することが決定された。朝鮮メディアは同会議で「党中央の戦略的構想に則って、国の戦争抑止力を一層拡大強化するための軍事的担保を実現する上で重大な問題を審議、承認し、そのための軍事組織編制の改編案を批准した」と伝えた。
ところが、朝鮮の敵対勢力は「戦争抑止力を一層拡大強化」するために下した決定を「脅威」と断定し、これを口実に朝鮮との軍事的対決を煽った。
朝鮮が「核弾頭を搭載した戦術核兵器」を振りかざして「南侵」を企てるという荒唐無稽な戦争シミュレーションを前提に米国による拡大抑止、すなわち朝鮮をねらった核先制攻撃体制の強化を正当化する言説が端的な事例だ。さらには「米国がソウルを守るためにワシントン、ニューヨークが戦略核で攻撃される危険を冒すだろうか」と自問自答しながら、「奇襲的な核攻撃」に備え南に戦術核兵器を再配備しなければならないと主張する世論誘導もあった。
軍事的妄動の災禍
前線部隊の作戦任務追加に関する朝鮮メディアの報道に「戦術核兵器」という言葉は登場しない。ところが、朝鮮の核技術が高度化することを極度に恐れる敵対勢力は、それを口実に自らの好戦的態度をさらけ出した。
「我々の主敵は、戦争そのもの」であるという立場を公表している朝鮮は、戦略及び戦術核兵器に戦争抑止力としての使命と任務を与えている。
米国の執拗な核戦争威嚇に対抗し、朝鮮が米本土を射程圏内に収める「火星」系列の大陸間弾道ミサイルと超大型水素爆弾を開発完成させてから数年が経つ。ところが戦略核兵器を保有しても、長きにわたる交戦相手の軍事的威嚇と挑発は直ちに中断されない。実際に「北侵」シナリオに沿った米南合同軍事演習は今も続いている。
朝鮮半島とその周辺に現実的に存在する懸念と脅威を安定的に治め戦争を防ぐには、強力な対抗手段がなければならない。朝鮮が異なる作戦の目的と任務に応じて異なる手段として使用することができる戦術核兵器の開発に尽力する所以だ。
その兵器の使命は、戦争に巻き込まれないようにすることが基本だ。しかし、敵対勢力が国家の根本利益を侵害しようとする状況や、戦争状態に突入すれば、その使命は変わらざるを得ない。朝鮮は「戦争初期に主導権を掌握し、相手の戦争意志を焼却し、長期戦を防ぎ、自国の軍事力を保存するために核戦闘武力が動員されることになる」(金正与・党中央委副部長の談話)と公言したことがある。
抑止力は、無謀な選択がもたらす結果を相手に認識させることで作用する。軍事的妄動に対する警告は、実際の戦闘能力によって裏づけられる。小型化・軽量化・多種化・精密化された朝鮮の核兵器は、いかなる勢力であっても北侵攻戦争を企てることすら躊躇させる平和守護の力となっている。
(金志永)