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〈朝鮮民族の美 42〉金弘道「打作図」(風俗画帖より)

2012年12月14日 16:48 歴史

金弘道は、中国絵画の主流となっていた山水画をまねて、わが国の平凡な画家がしきりに描いた空想的な山水画を描くことはなかった。

彼の多様な作品を貫いていたのは、生活し、働いている当代社会の名もない人々を主人公とする態度である。

紙に淡彩、27×22.7cm、ソウル中央博物館

この「稲こきの図」を見ることにしよう。6人の農民が稲束を運んできて、大きな枯れ木に打ちつけ、籾を取る作業をしている。その顔はみな体を動かし働く喜びが表情に出ていて、活気に溢れている。

人物を描く輪郭の線は、一見すると粗雑なようであるが、よく見ると太く細く、リズムをもって事物を正確に描いていく絶妙の線描であることがわかるであろう。

右上にいるのは、横に酒瓶を置き、長いキセルをふかしているマルム(原硯=小作管理人)と呼ばれる男。都市にいる不在地主の委託を受け、現地にあって小作人を管理し、小作料の取り立てなどを行う人物である。

普通ならば、小作人と利害の対立があって、このようにのんびりとしておれないのであるが、朝鮮王朝でもっとも安定した18世紀であったので、マルムも農民の準備してくれた酒を横に置いて、間の抜けた顔をしておれたのだ。金弘道も良い時代を背景に、働く農民の姿を生き生きと描いた傑作を残すことができたのである。

(金哲央)

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