〈朝鮮民族の美 41〉金弘道「建築図」(風俗画帖より)
2012年12月07日 17:45 歴史金弘道は、働く人がどんな道具や材料を持って、何を作っていくのかを正確に描いている。これは、近世以前の画家としては、ごく珍しい態度といわねばならない。
画面中央の直立した太い柱、それに支えられる三角形の屋根、まことに明快な構図の中で、人々が家を建てるという一つの目的をもって有機的に働いている。
この画では、すでに棟からの軒に垂木をかけ、その上に板を敷いて、まさに瓦を葺こうとしている屋根から縄で引き上げようとしているのは、瓦の下に敷く粘土の塊だ。
瓦職人は、瓦を置くまえに、景気よくそれを空中に投げ上げては、自分の仕事に活気を与えている。
下では、カンナをかける人、柱の横に立つのは大工の棟梁であろうか。重しをつけた糸で柱の傾きを点検している。長い杖を持って工事を見守る人物は、この家の注文主であろうか。
画面右下の朝鮮独特のノコギリと手斧にも注意されたい。
このように金弘道は、政府の図画署の画員でありながら、伝統的な絵も描いたであろうが、その他に働く人々の生活を活きいきと描き出すことにより、わが国の人物画や風俗画に革新的な新しい模範を作り出し、後につづく画家たちのために創作上の活気を与えたのである。
(金哲央)