「反撃能力」保有明記へ
2022年12月08日 09:36 社会を知る~今週のnewsトピック~日本社会や在日同胞を取り巻くニューストピックを週に一度、紹介する。
沖縄県、ヘイト条例骨子案発表
沖縄県は5日、県内のヘイトスピーチを規制する「沖縄県差別のない人権尊重社会づくり条例(仮称)」の骨子案を発表し、県民の意見を募集するパブリックコメントを開設した。募集期間は来年1月6日まで。
骨子案には、外国ルーツの人など「本邦外出身者」に対する差別言動があった場合、その概要と発言者の氏名を公表するほか、インターネット上でヘイトスピーチが行われた場合には、拡散防止として該当する投稿の削除要請を講じることが明記された。また、相談体制の整備、本人の意思に反する性自認や性的指向公表の防止についても基本方針をまとめた。
一方、同骨子案には現時点で罰則規定は設けられていない。県は年度内の条例制定を目指すが、県内の反差別団体などは罰則規定が定められていないことや沖縄差別などへの対処不足を指摘、条例の実効性を疑問視している。
「反撃能力」保有明記へ
日本政府が今月末に改定する「国家安全保障戦略」などの「安保3文書」に「反撃能力(敵基地攻撃能力)」保有について明記されることが固まった。またこれと関連し、日本政府は、来年から5年間の防衛費を総額43兆円に増額する方針を立てた。これまでの1.5倍という大幅増額となる。
自民党、公明党は2日の協議で「敵基地攻撃能力」を言い換えた「反撃能力」の保有を明記することで合意。これにより、相手国の領域は攻撃しないという「専守防衛」の姿勢が転換される。
「安保3文書」に盛り込まれることになる「反撃能力」を巡って、日本政府は2020年から保有検討の必要性を強調し、今年10月には岸田首相が「防衛力の抜本的な強化」のための内容検討、財源確保の現実的な検討に入ると表明した。
日本政府はこれらの政策転換を年内に決着させようとしている。市民社会からは「軍拡を進める先には戦争しかない」「税金は防衛費より教育・福祉に回すべき」であるとの批判があがっている。
一方、防衛省は「防衛体制強化」を名目に、沖縄駐屯の陸上自衛隊「第15旅団」を大規模部隊とする方針を決定した。現在の2千人を、27年まで3千人に増やす方向。事実上の師団(4千900~7千人規模)となり、県内外では軍事衝突の可能性を危惧する声が高まっている。
沖縄での部隊増強の方針は「安保3文書」にも明記される見通し。今年度末には石垣島にも駐屯地を新設し、ミサイル部隊を設置する動きにあるという。
嘉手納、普天間住民合同訴訟はじまる
米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)と米軍普天間飛行場の周辺住民30人が、国を相手取り基地の騒音被害を訴えた行政訴訟の第1回口頭弁論が11月30日、那覇地裁(藤井秀樹裁判長)であった。
裁判では、原告側弁護士が訴訟の概要を陳述し、原告が意見陳述を行った。
同種訴訟を巡っては、1982年(嘉手納)と2002年(普天間)からそれぞれ米軍機の差し止めなどを求め民事訴訟が起こされたが、いずれも「国の支配が及ばない第三者の行為」を拘束できないとして却下された。周辺住民が合同で起こす裁判は今回が初めて。
原告らは沖縄「復帰」50年を節目に被害の深刻さと問題放置の現状を問うとしながら、日米地位協定の改定をせずに騒音被害を放置し、米軍機の飛行差し止め請求をできない地位に置くのは違法であるとしている。
不自由展裁判、2審も市側の控訴棄却
2019年8月1日から約2カ月間、愛知県で開催された国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の実行委員会(会長=大村秀章・愛知県知事)が名古屋市に対し、未払いの負担金を支払うよう求めた訴訟の控訴審判決が2日、名古屋高裁(松村徹裁判長)であった。裁判所は市側の主張を全面的に退け、控訴を棄却した。
裁判で、市側は展示作品の違法性について主張し、負担金のうち約3300万円を支払い拒否。実行委は未払い分の支払いを求め、20年5月に名古屋地裁に提訴。裁判所は1審判決で市側の主張を退けていた。
控訴審判決で松村徹裁判長は「芸術祭は公共事業とはいえない」と指摘したうえで「市が負担金の未交付部分の支払いを拒むことはできない」と一審判決を支持した。
国会議員の差別発言を問題視
杉田水脈総務政務官による過去の差別発言が問題視されている。
きっかけは、11月30日に行われた衆議院予算委員会での立憲民主党・塩村文夏議員による質問。杉田政務官が過去、SNSなどに投稿した差別発言について問いただした。そこでは同氏が月刊誌に「LGBTは生産性がない」「男女平等は反道徳の妄想」などと寄稿していた他、2016年の国連女性差別撤廃委員会(スイス・ジュネーブ)に関し、ブログで「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」などと、在日朝鮮人やアイヌ民族に対する差別発言を記載していたことが明らかになった。
これに対し杉田政務官は、自ら書いたと認めつつ「100人ぐらいの方々が取り囲んで、至近距離で罵声を浴びせられた。当時、一般人だった私がこのような感想を持つのは仕方がなかった」と的外れな釈明を展開、謝罪や撤回を拒否した。SNSなどでは同氏の更迭を求める声が相次いでいる。