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〈取材ノート〉「私たちのチブ」だから

2022年11月16日 09:00 論説・コラム

愛知県名古屋市の同胞デイサービスセンター「いこいのマダン」に通う柳一子さん(84)は、かつて名西支部稲生分会の管下に住んでいた。家の近くには支部会館があった。

柳さんの日課は会館の清掃だった。誰かにいわれたわけではなく、自主的に始めたものだ。

「だって私たちのチブ(支部)だもん」。柳さんはさらりと語る。「お世話になっているから、チブをキレイにできることはありがたかったよ」。

同胞たちも支部会館によく集まった。会議をする時もあれば皆でご飯を食べたり、映画を観る日もあった。

「チブの調味料は切らしたことがない。家のものを持って行ってまで補充していたよ。家よりも憩いの場だったかもしれない」そういって柳さんはクスクス笑った。

支部を大切に思う柳さんの心境の根底には、踏みにじられた尊厳を取り戻した経験がある。朝鮮学校閉鎖令が発令された1949年、当時10歳だった柳さんは街角でのビラ配りに参加していた。

「学校がつぶされるのが嫌。ただそれだけの気持ちで毎日毎日街頭に立った。みんなそれなりに苦労もしたけど、悪いことじゃないよね」。

話を聞き入る筆者の手を握り「ウリトンポのために頑張ってください」と笑いかける柳さん。支部、学校、同胞のために半生をささげた先代の重みが伝わった。

先日、居住地域の支部会館を朝青員で大掃除した。埃をかぶった荷物を見て、長らく掃除できていなかったことを今になって悔やんだ。同胞社会への貢献も、身近なところから実践していきたい。

(紗)

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